兵庫県姫路市で4校舎を展開する個別指導Growing。2018年の開校以来、地域に根ざした教育活動と生徒との距離の近さを大切にしながら着実に成長を続けています。今回は塾長の山田先生に、創業の経緯から独自の指導方法、さらには将来の展望までお話をうかがいました。

保護者の要望を受けて学習塾を開校

——本日はよろしくお願いします。山田先生が塾を創業されたきっかけをお聞かせいただけますか？

よろしくお願いします。私はもともと教員志望で大学に進学したのですが、卒業後は一般企業に就職しました。しかし、社会人2年目の時、学生時代に塾で教えていた生徒と偶然再会し、そこから2014年に家庭教師を始めました。

その後少しずつ生徒が増え、「合格は厳しい」と言われていた生徒たちの逆転合格の実績を見て、塾を開いてほしいという保護者の要望があり、2018年に最初の校舎を開設しました。

——教員志望から一般企業を経て教育の道に戻られたのですね。偶然の再会が人生を変えるきっかけになるというのは素敵なストーリーです。どのように展開していったのでしょうか？

最初は自宅の2階を開放して指導を始め、2019年に2校舎目を開設しました。その後も保護者からのご要望で校舎を増やし、現在は4校舎になりました。3校舎の開校時には、保護者が生徒募集や物件探しを手伝ってくださり、開校初月から35名が集まり黒字でスタートできました。創業当初は多校舎展開は意図していませんでしたが、保護者や生徒の要望に応える形で自然に拡大しました。

今後の展開としては、「幼児教室ヘーグル」という0歳から通える教室を姫路に開設し、2025年3月には大阪江坂にも進出予定です。また「学童教育スクプラ」も含めると、2025年3月には合計7校舎になる見込みです。

幼少期からの教育基盤づくりと、「うちの子を何とかしてほしい」という声に応える形で事業を拡大しています。私自身も子どもを持つにいたり、自分の子どもに最良の教育を提供したいという思いも原動力となり、0歳から大学生までサポートできる体制を構築しています。

生徒の可能性を広げる多彩な取り組み

——保護者が開校に協力するほど信頼されているのは素晴らしいですね。開校されているエリアの特徴と塾のスタイルについても教えていただけますか？

姫路北部は受験が盛んで教育熱心なご家庭が多い文教地区です。一方、当塾が展開している地区は受験に熱心というよりは勉強が苦手で塾に対して「うちの子を何とかしてほしい」という要望が強いエリアです。中学受験志向は神戸・西宮に比べると少ないものの、一定のニーズには対応しています。

当塾の最大の特徴は、生徒・保護者との距離の近さです。講師と生徒の信頼関係が強く、旅行や課外活動も一緒に行います。また、私自身が兵庫県高校入試の解答速報をローカル番組で解説するなど、地域に根ざした活動を展開しています。入試当日には朝10時半に集まったトップ講師陣とともに試験終了後30分で送られてくる問題を全て解き、解説を準備します。

教育委員会や行政とのつながりも強く、姫路市長や副市長とも懇意にしており、地域の教育イベントも主催しています。

——地域との結びつきがとても強いんですね。入試解答速報をテレビで解説されるなど専門性の高さも伝わってきます。

教科指導以外にもさまざまな教育活動を展開しています。姫路市の小学4年生から中学2年生を対象に、「令和の虎」のようなキャリア教育プログラムを実施しています。4〜5人のチームで商品企画から開発、投資家へのプレゼンテーション、実際の販売まで体験してもらいます。与えられた時間内でいかに収益と純利益を上げられるかを競うリアルな起業体験です。

また、地域の夏祭りを自治会と協力して企画運営したり、クリスマス会、講師の誕生日に生徒とパイ投げをしたり、卒業旅行を実施するなど、学習以外の場でも生徒との絆を深めています。イベントを通じて生徒たちの人間的成長を促し、好奇心や社会性を育むことを大切にしています。

——学習だけでなく、実社会での経験や人間関係を育む多彩なプログラムを提供されているんですね。

 

オープン空間と無料テスト対策ーー効果を重視した独自の指導スタイル

——つづいて塾の指導についてうかがいます。指導方法や特色あるプログラムがあれば教えていただけますか？

基本は講師1人に対して生徒2〜3人の個別指導で、希望に応じて1対1も対応しています。授業時間は80分で、平日は17:30、19:30、20:30からの3コマ制です。一般的な個別指導塾との違いは壁やパーテーションのないオープン空間での指導方式です。「一斉指導の塾ですか？」と体験授業で聞かれることもありますが、これは意図的な設計です。

——パーテーションがある方が指導に集中できるのではないですか？

はい、パーテーションのメリット自体は認めています。しかし、大手個別指導塾で講師をしていた時の経験から、パーテーションがあると生徒が居眠りや壁への落書き、スマホなどに気を取られやすくなり、自習も放置されがちになると感じていました。

オープン空間にすることで講師が生徒全員の状況を常に把握でき、適切なタイミングで声掛けができます。周囲の音が気になる可能性はありますが、成績向上の実績からこの方式の有効性は高いです。

——なるほど。大人の目があることで自分を律することにもつながりますよね。そのほかに特徴はありますか？

テスト対策を無料で実施しているのも当塾の特徴です。各学校・学年ごとに5教科すべてのテスト対策授業を無料で実施しています。テスト期間が重ならないよう土日も活用し、最低10コマ分のテスト対策を提供しています。また自習指導も単なる場所提供ではなく、目的に合わせたプリントを用意するなど「自習も授業の一つのパッケージ」という考えでサポートしています。

最近は自立型学習として映像授業も取り入れました。以前は映像授業に否定的でしたが、復習効率の向上や通塾が難しい家庭への対応として導入に踏み切りました。テスト対策も含めた総合的なサポートを提供しています。

——生徒にとって学びやすく、成果が出る仕組みづくりを徹底されていることがわかります。どのような生徒さんが通われていますか？

開校当初は勉強が苦手な生徒が中心で、公立高校への進学が厳しいレベルの生徒が多かったのですが、現在は姫路のトップ校である西校への合格者も輩出するなど、幅広い学力層に対応しています。通う生徒の大半は近隣に住む方で、口コミで遠方の生徒も集まっています。卒業生の紹介や職場の同僚からの紹介で、高砂や辰野などの離れた地域からも通塾があります。

 

入試の多様化に対応した総合的サポート

——主に何回授業を受ける生徒が多いでしょうか？

中学2年生までは週2回の通塾が多く、中学3年生からは毎日通う生徒も増えます。高校生は中学から通ってそのまま継続する生徒が8割で、一度卒業後に再入塾するケースも少なくありません。

高校生には総合型選抜や学校推薦型選抜の面接・小論文対策も提供しています。外部講師を招いての面接指導や、塾長自身による面接対策など、入試の多様化に対応した指導を行っています。

——幅広い学力層の生徒に対応しているんですね。小学生の指導についても教えていただけますか？

受験をしない小学生には中学進学を見据えた集中力養成と、特に国語力の強化に注力しています。文章読解力不足や算数の文章題への苦手意識を持つ児童が増加しているため、国語重視の授業構成にしています。

また幼児教室「ヘーグル」のメソッドを応用した記憶トレーニングも実施しています。中学での学習を見据え、記憶能力を高める根本的な学習スキルを身につけさせることを重視しています。

これらの指導には独自開発した教材を活用しており、児童の特性や地域の学校カリキュラムに合わせた内容を提供しています。

中学受験については当塾でも対応可能ですが、本格的な受験は浜学園グループである「幼児教室ヘーグル」と連携しています。大手進学塾についていけない層のフォローアップという位置づけで、兼塾率も高いです。塾の先生に質問しづらい部分を補完する役割も果たしています。

——小学生からの基礎力強化と、中学受験への柔軟な対応を両立されているんですね。教室環境や保護者とのコミュニケーションについても詳しく教えていただけますか？

教室内は生徒と講師が楽しそうに授業をしている雰囲気が特徴です。適切なメリハリをつけ、私語や遊びには注意しつつも、部活や恋愛の悩み、親にも相談できない内容なども受け止められる関係性を構築しています。笑い声と真剣に学ぶ声が混在する活気ある環境です。

ご家庭とのコミュニケーションは各校舎の公式LINEアカウントを活用し、迅速な情報共有を心がけています。以前は紙ファイルでの指導報告をしていましたが、利便性や中学生の親子関係の複雑さから、現在は電子端末での閲覧システムへの移行を検討中です。入退室管理システムも導入し、生徒の安全を確保しています。

個別面談を年2回、全体説明会も年2回実施し、定期的に保護者との情報共有の機会を設けています。

主体的に生徒と関わる人材の育成

——親しみやすさとメリハリのある環境づくりには講師陣の色がでると思います。講師陣の特徴や採用基準についても教えていただけますか？

教育への情熱を重視して採用しています。教室長も管理業務だけではなく、自ら授業に出ることを原則とし、生徒との信頼関係構築を最重視しています。人事労務的な評価や保護者の目ではなく、自発的に生徒のためを思って行動する姿勢を大切にしています。

学生講師を含め年3〜4回の研修を実施し、特にマナーや礼儀作法の指導に力を入れています。外部講師を招いての専門研修と内部での実践的研修を組み合わせています。ネイルや髪色などの外見は個性として認めて、たとえば生徒から「先生めっちゃかわいい」という反応がアイスブレイクとなり学習意欲向上につながることもあります。

自主性を重んじつつも、基本的な挨拶や礼儀については厳しく指導しています。成果主義を基本としており、生徒の成長に貢献できれば外見や個性は尊重する方針です。他塾からの転職者には環境の違いに戸惑う方も多いですが、主体的に生徒と関わることを重視する人材が定着しています。

——講師にも主体的を求めていらっしゃるのですね。形式よりも実質を重視する姿勢が伝わってきます。卒業後も生徒との関係を大切にされているとのことですが、詳しく教えていただけますか？

はい、卒業生との関係を非常に大切にしています。教え子が講師として戻ってくるケースが増えています。他にも、たとえば4校舎目の壁塗りを卒業生が手伝ってくれたこともあります。毎年100名近い卒業生を送り出しているので、彼らが社会で活躍するキャリアを築き、将来的には相互支援できる関係を目指しています。

2月末から3月にかけては成人した卒業生との交流イベントも企画しており、実行委員長も決まっています。現在は卒業生の就職支援にも力を入れており、地域の人脈を活かして適性に合った就職先を紹介しています。「生まれたゆりかごから墓場まで」とまではいきませんが、長期的な人生のサポートを目指しています。

生涯にわたるサポートを目指して

——卒業後もずっと続く関係性を大切にしているのですね。教育の枠を超えた人生のサポートという視点が素晴らしいと思います。最後に、塾の目指す姿と保護者へのメッセージをお願いします。

当塾は単なる学習塾ではなく、将来的には学校のような存在を目指しています。「ここに通ってよかった」と思ってもらえる場所づくりを進めています。長期的な関係構築を重視し、夢の発見から進路選択、就職まで一貫してサポートする体制を整えています。

成績向上はもちろん重要ですが、それ以上に「この子が将来どうなりたいか」を一緒に考えることを使命と考えています。偏差値教育の比重が下がり、大学入試では総合型選抜の割合が増えています。また高校入試でも推薦入試が増加するなど、人物重視の社会へと変化しています。

このような時代に求められるのは、コミュニケーション能力や笑顔、当たり前のことを当たり前にできる人材です。健全な反抗期も含めた成長過程を大切にし、「学校より学校らしい」存在として、「悪いことは悪い、良いことは良い」という明確な指針と、適切な褒め方・叱り方のメリハリをつけた教育を提供しています。

先を見据えた進路選択のために、夜遅くまで膝を突き合わせて対話することも厭いません。地域に根差した教育機関として、子どもたちが楽しく通いながらもメリハリある学びができる環境を提供し続けます。

私は話が長いとよく言われ、そこは覚悟いただきたいのですが（笑）、ぜひ体験授業にお越しください。

——子どもたちの人生を長期的に支える場所を目指していることに感銘を受けました。本日はたいへん興味深いお話をありがとうございました。

取材協力：個別指導Growing

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