- 読む・書く・計算する、それぞれの困りごとに合う指導の例
- 一般の個別指導塾と専門的な学習支援の選び分け
- 塾を選ぶときに確かめたい3つのこと
- 体験授業・面談で使える質問例と、塾以外の相談先
「問題文を読むのに時間がかかる」「漢字を何度練習しても覚えられない」「計算の手順がなかなか身につかない」。こうした学習の困りごとがあるお子さんについて、塾でどこまで対応してもらえるのか、悩んでいる保護者もいるでしょう。
学習障害(LD)があるからといって、専門塾しか選べないわけではありません。一般の個別指導塾でも、教材や教え方を工夫することで、お子さんに合った指導を受けられる場合があります。
ただし、個別指導ならどこでもよいわけではありません。大切なのは、お子さんが何に困っているのかを整理し、必要な指導を受けられる塾を選ぶことです。
この記事では、読み書き・計算の困りごとに合った指導方法や、学習障害のあるお子さんに合う塾の選び方を解説します。一般の個別指導塾と専門的な学習支援の違い、体験授業で確認したいことも紹介します。
学習障害の子の塾探しは、何に困っているかの整理から
学習障害のあるお子さんの塾選びでは、苦手な教科だけでなく、どのような学習活動が難しいのかを具体的にすることが出発点です。
学習障害(LD)とは、基本的には全般的な知的発達に遅れがないものの、特定の学習能力を身につけたり、使ったりすることに著しい困難がある状態を指します。
文部科学省では、教育上の学習障害について「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」の6つの能力を挙げています。
なお、医療分野で使われる「限局性学習症」は、主に読み・書き・計算に関する困難を対象としており、教育分野の学習障害とは定義の範囲が異なります。
参考:文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について」(定義は平成11年「学習障害児に対する指導について(報告)」より)
ただし、読み書きや計算が苦手だからといって、必ずしも学習障害とは限りません。また、同じ学習障害でも、困りごとの内容や程度は一人ひとり異なります。
例えば、算数の文章題が苦手なお子さんでも、問題文を読むことに時間がかかる場合と、数量の関係を理解することが難しい場合では、必要な指導が違います。
塾を探す際は、普段の宿題や学校のテストを見ながら、どこでつまずいているのかを整理してみましょう。
「算数が苦手」ではなく、「繰り上がりの計算になると手順がわからなくなる」というように具体的に伝えられると、塾も指導方法を考えやすくなります。
読み書き・計算が苦手な子には、どんな指導が合う?
学習障害のあるお子さんには、一般的な教え方や教材が合わないこともあります。
例えば、問題文を読むことに時間がかかる場合には読み上げを取り入れる、文字を書くのが難しい場合には解答方法を変えるなど、学習の進め方を工夫する方法があります。
お子さんの困りごと 検討できる対応 問題文を読むのに時間がかかる 読み上げ、文字の大きさや行間の調整 文字を書くのに時間がかかる 書く量の調整、口頭回答やパソコン入力 計算の仕組みが理解しにくい 図やブロックなどを使った説明、基礎からの復習 宿題を終えるのに時間がかかる 問題数の調整、優先して取り組む課題の選択
これらは指導方法の一例であり、すべてのお子さんに合うわけではありません。実際の困りごとに合わせて、どのような方法がよいか検討する必要があります。
読むことに時間がかかる場合
文字を読むのが難しいお子さんの場合、文章の意味を理解することが苦手なのか、文字を正確に読み取ること自体が難しいのかによって、指導方法が変わります。
例えば、自分で問題文を読むと時間がかかっても、講師が読み上げると内容を理解して解ける場合があります。
そのようなお子さんには、問題文の読み上げや、文章を短く区切って提示する方法などが考えられます。文字を大きくしたり、行間を広げたりすることで読みやすくなる場合もあります。
一方、文字を読む力そのものを伸ばしたい場合には、読み上げだけでは十分とは限りません。文字と音の関係や、文章の読み方を段階的に練習するなど、お子さんの状況に応じた指導が必要です。
塾には、問題文を読む負担を減らしたいのか、読む力そのものを身につけたいのかを伝えると、どちらに対応できるかを具体的に答えてもらえます。
文字を書くのが難しい場合
文字を書くことが難しいお子さんの困りごとは、漢字を覚えにくい、板書を写すのに時間がかかる、長い文章を書くと疲れてしまうなど、子どもによって違います。
この場合、書く練習を繰り返すだけでなく、何を学ぶための課題なのかによって取り組み方を変えることが考えられます。
例えば、算数の考え方を理解することが目的なら、長い説明文を書かずに口頭で答えたり、必要な部分だけを記入するプリントを使ったりする方法があります。
タブレットやパソコンでの入力も選択肢になりますが、機器を使えば必ず学習しやすくなるとは限りません。
漢字を書く練習をするのか、学習内容を理解しているか確かめるのかによって、適した方法は異なります。
なお、塾で口頭回答やパソコン入力ができても、学校のテストで同じ方法を使えるとは限りません。学校での対応については、別途確認が必要です。
計算や数の理解が苦手な場合
計算が苦手なお子さんについては、計算の手順を覚えることが難しいのか、数の大きさや位取りなどの基本的な仕組みが理解できていないのかを確認します。
例えば、筆算で繰り上がりや繰り下がりを何度も間違える場合、単に計算練習が足りないのではなく、その仕組みを十分に理解できていない可能性もあります。
そのような場合には、計算問題を繰り返し解くだけでなく、ブロックや図を使って数の関係を確かめる方法が考えられます。
また、現在の学年の問題が難しい場合は、前の学年の内容まで戻って学ぶことも選択肢になります。
電卓の使用についても、計算そのものを練習するのか、計算の負担を減らして文章題の考え方を学ぶのかによって判断が異なります。
塾に相談する際は、実際に間違えた問題を見せ、どこでつまずいているのかを一緒に確認してもらうとよいでしょう。
一般の個別指導塾と専門的な学習支援、どちらを選ぶ?
学習障害のあるお子さんでも、一般の個別指導塾で必要な指導を受けられる場合があります。 一方、読み書きや計算の基礎的な力を身につけるために、専門的な知識や指導経験が必要になることもあります。
どちらを選ぶかは、塾に何を求めるかによって考えましょう。
お子さんの学習目的・状況 検討したい選択肢 学校の授業についていきたい 教材や授業の進め方を調整できる個別指導塾 前の学年の内容から復習したい 理解できていない単元まで戻って教えられる塾 文字を読む・書くなどの基礎的な力を身につけたい その困りごとへの指導経験や専門知識がある塾・学習支援機関 何が原因で学習につまずいているのかわからない 学校や専門の相談機関への相談も検討
一般の個別指導塾でも、学習障害への指導経験が豊富な講師がいる場合があります。反対に、専門的な学習支援を行う塾でも、希望する教科の補習や受験対策に対応しているとは限りません。
また、集団指導塾が一律に合わないわけでもありません。授業の進度や教材の使い方がお子さんに合っており、必要な対応を受けられるなら、集団指導も選択肢になります。
塾の種類や授業形式だけで決めず、実際に通う教室で必要な指導を受けられるかを確認しましょう。
塾を選ぶときに確かめたい3つのこと
一般の個別指導塾でも専門的な学習支援でも、入塾前に見ておきたい点は共通しています。授業の進め方、教材と宿題、担当講師の3つです。
学習の進み具合に合わせてもらえるか
まず確認したいのは、お子さんの理解度に合わせて授業内容を変更できるかです。
個別指導塾でも、学校の進度に沿って授業を進める塾と、お子さんの理解度に合わせて学習内容を決められる塾があります。
例えば、小学5年生でも小学3年生の計算でつまずいている場合、そこまで戻って教えてもらえるかが重要になります。
一方、学校の授業の復習が目的なら、毎回の授業で学校の教材やテストを扱ってもらえるかも確認したいところです。
講師1人が担当する生徒数だけでなく、どこから何を教えるか、お子さんの状況に合わせて決められるかを確認しましょう。
教材や宿題を調整できるか
塾によっては、決められたテキストや宿題を使うことが前提になっている場合があります。
そのため、教材の種類が豊富かどうかより、必要に応じて使い方を変えられるかのほうが、学習障害のあるお子さんには大きな違いになります。
例えば、学校の宿題やテストを持ち込めるか、理解できている問題を減らして苦手な問題に時間を使えるか、といった点です。
宿題についても、毎回決まった量を出すのではなく、お子さんの負担や学習状況に合わせて変更できるかを聞いておくとよいでしょう。
特に、読み書きに時間がかかるお子さんの場合、授業で習った内容は理解できても、宿題を終えるまでに長い時間がかかることがあります。
家庭で無理なく取り組める量も含めて相談できる塾なら、継続して学びやすくなります。
担当講師に困りごとを伝えられるか
学習障害のあるお子さんへの指導経験や、特別支援教育に関する知識は、塾を選ぶ際の参考になります。
ただし、専門資格を持つ講師が在籍しているだけで、お子さんに合った指導を受けられるとは限りません。
確認したいのは、実際に担当する講師がお子さんの困りごとを理解し、指導方法を考えてくれるかです。
また、入塾時に相談した内容が担当講師に伝わるか、講師が交代した場合も引き継がれるかを確認しておくとよいでしょう。
入塾後に教え方が合わないと感じたとき、授業内容や担当講師について相談できることも、塾選びの判断材料になります。
学習障害のあるお子さんに合う塾を探したい方へ
一般の個別指導塾から発達障害への学習支援を行う塾まで、候補を比較できます。
※実際の指導内容は教室や担当講師によって異なります。希望する対応が受けられるか、各教室に確認してください。
体験授業で実際の対応を確かめよう
塾を選ぶ際は、ホームページに書かれている指導方針だけでなく、実際にどのような授業を受けられるかを確認しましょう。
「学習障害に対応していますか?」と聞いても、「一人ひとりに合わせて指導します」という説明だけでは、具体的な指導内容までわからない場合があります。
面談では、お子さんの困りごとを具体的に伝えたうえで、どう対応するかを質問すると、塾の経験の深さが見えてきます。
面談での質問例 回答で確認したいこと 問題文を読むのに時間がかかるのですが、どのように対応してもらえますか? 読み上げなど、具体的な対応を提案してもらえるか 書く量が多いと疲れてしまうのですが、宿題や解答方法を変更できますか? どの範囲まで変更できるか 計算の基礎から教えてほしいのですが、前の学年まで戻れますか? どこから復習するか、どのように決めるか 学校では板書の撮影やタブレットの使用を認めてもらっています。塾でも同じ方法で学べますか? 学校で受けている配慮を、塾の授業や宿題でも続けられるか 入塾後に指導が合わなかった場合、変更できますか? 授業内容や担当講師について相談できるか
「対応できます」という返答だけでなく、実際にどのような方法を取るのかまで聞くことが重要です。
例えば、「問題文を読み上げられます」と言われた場合は、毎回の授業でも対応できるのか確認するとよいでしょう。
可能であれば、普段の宿題や学校のテストなど、お子さんが困っている様子がわかるものを持参し、体験授業で実際に扱ってもらうのがおすすめです。
また、お子さん本人にも、講師の説明がわかりやすかったか、わからないときに質問できそうかを聞いてみましょう。
希望する対応を実際に試してもらい、お子さんが無理なく学べそうかを確かめることが、入塾判断につながります。
料金や通塾回数も確認しておく
希望する指導を受けられることがわかったら、次は料金と通塾回数です。
1対1指導や特定の教材を使う授業を希望する場合は、通常の授業料と異なることがあります。入塾前に、授業料だけでなく教材費や諸費用なども含めた総額を聞いておきましょう。
また、週に何回通うかは、学習目的とお子さんの負担を考えて決めます。
学校の授業の復習が目的なのか、読み書きや計算の基礎から取り組むのかによって、必要な授業内容は変わります。
通塾回数を増やせばよいとは限らないため、家庭での学習も含めて、続けられる回数を相談しましょう。
塾だけでは対応が難しいときの相談先
お子さんの困りごとによっては、塾での教科学習だけでは十分に対応できないこともあります。
例えば、読み書きの困難が強く、どのような方法で学習すればよいかわからない場合や、学校の授業やテストでも配慮が必要な場合です。
このようなときは、学校の担任や特別支援教育コーディネーター、地域の教育相談窓口などに相談することも考えられます。
学校で受けられる支援には、障害による学習上・生活上の困難の改善や克服を目的とする「通級による指導」などがあります。通常の教科学習を補う塾とは目的が異なり、利用できるかどうかはお子さんの状況などによって判断されます。
また、学習上の困りごとの背景がわからない場合には、専門の相談機関や医療機関に相談する方法もあります。
一方、塾での学習は必要でも、通塾による負担が大きい場合には、家庭教師やオンライン指導を検討することもできます。
家庭教師と塾の違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
すでに塾に通っていて、続けるべきか迷っている場合は、現在の指導がお子さんに合っているか、塾に通う目的を達成できているかを見直してみましょう。
まとめ|必要な指導を受けられる塾を探そう
学習障害(LD)のあるお子さんに合う塾は、診断名や授業形式だけでは決まりません。
まずは、読み書き・計算のどこで困っているのかを整理し、必要な指導を受けられるか確認しましょう。
一般の個別指導塾でも対応できる場合がありますし、困りごとの内容によっては専門的な学習支援を検討したほうがよい場合もあります。
気になる塾が見つかったら、体験授業で実際の教え方やお子さんの反応を確かめてみてください。
読み方や書き方、解き方が自分に合っていれば、お子さんが「わかった」と感じられる場面は増えていきます。その手応えが、学び続ける力になります。
※本記事に掲載している情報は記事執筆時点のものです。料金・キャンペーンなどの最新情報は各教室にお問い合わせください。
