- ESAT-Jの仕組みと都立高校入試での配点(1020点中の20点)の意味
- 平均スコアやグレード分布の推移データから読み取れる、入試への実際の影響
- 不受験者への「みなし得点」の仕組み
「ESAT-Jって、結局うちの子の入試にどれくらい影響するの?」
都立高校の受験を控えたご家庭なら、一度は感じたことのある疑問ではないでしょうか。
2022年度から都立高校入試に導入された英語スピーキングテスト「ESAT-J」。従来の筆記試験に加えて「話す力」が点数化されるようになり、入試の仕組みそのものが大きく変わりました。
この記事では、ESAT-Jの配点の仕組みから実際の結果データ、入試への具体的な影響まで、保護者として押さえておきたいポイントを整理しました。
- そもそもESAT-Jとは?都立高校入試での位置づけ
- どんなテストなのか
- 導入の背景|「話す力」が入試に入った理由
- 試験は11月下旬・年1回きり
- 都立高校入試の配点の仕組み|ESAT-Jは1020点中の20点
- 合否を決める1020点の内訳
- 「たった20点」と侮れない理由
- 素点1点の差が入試4点の差に?グレード換算の仕組み
- 結果データで見るESAT-Jのリアルな影響
- 平均スコアは4年で14点以上アップ
- A・B評価に受験生の6割が集中
- 上位校志望なら「A評価」がスタートライン
- 不受験者の「みなし得点」は公平か?
- 筆記試験の点数から「推定」される仕組み
- 「相関データは持っていない」という答弁
- 「受けない方が有利」になるケースも?
- ESAT-J導入で中学校の英語授業はどう変わった?
- 授業で英語を「話す」機会は確実に増えた
- 一方で「減点されない話し方」の練習に偏りがち
- 期末テストと時期が重なる負担、広がる「スピーキング格差」
- 大阪府と比較|「一発勝負」は東京だけ?
- まとめ|ESAT-Jは都立高校入試をどう変えたのか
そもそもESAT-Jとは?都立高校入試での位置づけ
どんなテストなのか
ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)は、東京都教育委員会が導入した中学生向けの英語スピーキングテストです。
中学1年生から3年生まで全学年で実施されますが、都立高校入試に直接関わるのは中3で受けるテストです。その結果が入試の総合得点に加算されます。
テストはタブレット端末を使って行われ、画面に表示される問題に対して英語で回答を録音する形式です。
導入の背景|「話す力」が入試に入った理由
背景にあるのは、文部科学省が進める英語4技能(聞く・話す・読む・書く)のバランスの良い育成という方針です。
従来の都立高校入試では、英語は筆記試験とリスニングだけで評価されていました。つまり「読み・書き・聞く」は測れても、「話す力」だけが抜け落ちていたのです。
ESAT-Jの狙いは、入試にスピーキングを組み込むことで「話す練習をしなければ不利になる」という状況を意図的に作ること。
これにより、中学校の授業でもスピーキング指導が自然と重視されるようになると期待されています。
試験は11月下旬・年1回きり
ESAT-Jは毎年11月下旬に実施されます。入試本番の2〜3か月前という時期です。
この時期は期末テスト(内申点に影響する最後の定期考査)とも重なるため、お子さんにとっては対策のスケジュール管理がとても重要になります。試験は年1回きりなので、体調管理を含めた準備が欠かせません。
都立高校入試の配点の仕組み|ESAT-Jは1020点中の20点
合否を決める1020点の内訳
都立高校の一般入試では、合否は以下の3つの合計点で判定されます。
評価項目 配点 全体に占める割合 内容 学力検査
(5教科)700点 約68.6% 入試当日の筆記試験(500点満点を700点に換算) 調査書点
(内申点)300点 約29.4% 中学校の成績(65点満点を300点に換算) ESAT-J 20点 約2.0% スピーキングテストの結果を点数化 合計 1020点 100% この合計点で合否が決まる
従来の「学力検査+内申点」の1000点満点に、ESAT-Jの20点が上乗せされる形で加算されます。
「たった20点」と侮れない理由
全体の約2%と聞くと「大した影響はないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、人気校や上位校の合否ラインでは、1〜2点差に何十人もの受験生がひしめいています。
学力検査と内申点がまったく同じ受験生同士なら、ESAT-Jの結果だけで合否が分かれます。「僅差の勝負」になる上位校ほど、この20点の存在感は大きくなります。
素点1点の差が入試4点の差に?グレード換算の仕組み
ESAT-Jの結果は100点満点の素点がつきますが、入試に使われるのは6段階のグレード(A〜F)に変換された換算点です。
グレード 素点の範囲
(100点満点)入試での換算点
(20点満点)A 80〜100点 20点 B 65〜79点 16点 C 50〜64点 12点 D 35〜49点 8点 E 1〜34点 4点 F 0点 0点
ここで注目すべきは、各グレード間の差が一律4点であることです。
たとえばお子さんの素点が79点(Bグレード)だった場合、換算点は16点。あと1点高ければAグレードで20点でした。つまり、素点のたった1点の違いが、入試では4点もの差になるケースがあります。
逆に、素点が65点でも79点でも、入試ではどちらも同じ16点。この「得点の圧縮」は、保護者の間でも「不公平ではないか」と議論になっているポイントです。
結果データで見るESAT-Jのリアルな影響
平均スコアは4年で14点以上アップ
ESAT-Jの導入から数年が経ち、受験生の成績は右肩上がりで推移しています。
実施年度 平均スコア 前年度からの変化 2022年(令和4年度) 60.5点 ― 2023年(令和5年度) 65.2点 +4.7点 2024年(令和6年度) 68.3点 +3.1点 2025年(令和7年度) 74.9点 +6.6点
学校の指導体制が整ってきたこと、塾でのESAT-J対策が定着したこと、受験生がテスト形式に慣れたこと――こうした要因が重なり、平均点は上がり続けています。
A・B評価に受験生の6割が集中
平均スコアの上昇に伴い、A評価・B評価に該当する受験生の割合が年々増えています。
グレード 2023年度 2024年度 増減 A 25.3% 31.3% +6.0% B 29.2% 31.6% +2.4% C 26.0% 22.2% −4.0% D 11.9% 9.7% −2.2% E・F ― 約5.2% ―
2024年度の時点で、A評価とB評価の合計は全体の約63%。受験生の3人に2人が上位グレードに集中している計算です。
上位校志望なら「A評価」がスタートライン
この上位集中が意味するのは、上位校を目指すお子さんにとって、A評価の取得がほぼ「前提条件」になりつつあるということです。
もしお子さんがB評価(16点)で、周囲のライバルがA評価(20点)であれば、入試の段階ですでに4点のビハインドを背負うことになります。この4点を当日の筆記試験で取り返すのは容易ではありません。
つまり、上位校を狙うのであればESAT-JでA評価を取ることが「スタートライン」になりつつあるのが現状です。配点は20点でも、その20点が持つ重みは年々増していると言えるでしょう。
不受験者の「みなし得点」は公平か?
筆記試験の点数から「推定」される仕組み
病気やケガなどの理由でESAT-Jを受験できなかった生徒には、「みなし得点」が付与されます。
その仕組みはこうです。
-
その生徒の入試当日の英語筆記試験の得点を確認する
-
ESAT-Jを受けた全生徒の中から、同じ英語筆記得点を取った生徒たちを抽出する
-
その生徒たちのESAT-J換算点の平均値を、不受験者の得点として付与する
つまり、「筆記試験の英語がこのくらいできる人なら、スピーキングもこのくらいだろう」という推定に基づいた点数です。
「相関データは持っていない」という答弁
この仕組みは、英語の読み書き能力とスピーキング能力が高い相関関係にあるという前提で成り立っています。
しかし、都議会での質疑において、東京都教育庁は「英語学力検査の得点とESAT-Jの結果について、具体的な相関関係のデータはただ今持っておりません」と答弁しました。
制度の根幹にある前提が、統計的に検証されないまま運用されている可能性があるということです。
「受けない方が有利」になるケースも?
たとえば、筆記試験は得意だけれどスピーキングが苦手な生徒がいたとします。
その生徒がESAT-Jをあえて受けなければ、筆記が得意な他の受験生たちの高いスピーキング平均点を「借りる」ことができてしまう――こうした指摘が専門家から出ています。
意図的な欠席を推奨しているわけではありません。ただ、「受けた人より受けなかった人の方が有利になり得る」という制度設計は、公平性の面で課題が残ります。
保護者としては、こうした制度の限界も頭に入れつつ、お子さんが当日しっかり受験できるよう体調面・スケジュール面でサポートしてあげてください。
ESAT-J導入で中学校の英語授業はどう変わった?
授業で英語を「話す」機会は確実に増えた
ESAT-Jの導入後、中学校の英語授業は目に見えて変わりました。
これまで「おまけ」程度だったスピーキング練習が、入試に直結するという理由から、授業の中心的な活動のひとつに格上げされています。
イラストを見て状況を英語で説明する練習、自分の意見を組み立てて話すトレーニングなど、実践的な活動が増えました。
「入試に出るから練習する」という動機は理想的とは言えないかもしれません。それでも、英語を「話す」経験を積める機会が増えたこと自体は、前向きな変化と言えるでしょう。
一方で「減点されない話し方」の練習に偏りがち
ただし、その中身には懸念もあります。塾や学校で推奨される対策の多くは、高度な表現を使うことではなく、「中学生レベルの簡単な表現で、沈黙せずに話し続ける」というテクニックです。
英語で伝える力を鍛えるというより、「テストで減点されない話し方」を身につける練習に偏りがちなのが実情です。
お子さんの英語力を長い目で伸ばしたいなら、ESAT-J対策と並行して、英語を「使う」楽しさを感じられる環境も意識してあげたいところです。
期末テストと時期が重なる負担、広がる「スピーキング格差」
実施時期の問題も見逃せません。11月下旬は、内申点に直結する2学期の期末テストとほぼ同時期。
定期テストの勉強とESAT-J対策を限られた時間で並行しなければならず、お子さんへの負担は小さくありません。
加えて、学校間・家庭間の準備環境の差も広がっています。
ALT(外国語指導助手)が充実した学校、家庭でオンライン英会話を利用できるご家庭――こうした環境にあるお子さんほど有利になりやすく、「スピーキング格差」として問題視する声が出ています。
大阪府と比較|「一発勝負」は東京だけ?
スピーキング力を入試に反映させているのは東京都だけではありません。大阪府にも同様の仕組みがありますが、やり方はかなり違います。
比較項目 東京都(ESAT-J) 大阪府(外部検定活用) 評価対象 スピーキングに特化 英語4技能(バランス評価) テスト形態 独自開発テスト(全員同一) 英検・GTECなど(選択制) 入試への反映方法 調査書点に「加点」(20点) 当日点を「読み替え」(例:80%保証) 受験機会 年1回(11月下旬) 複数回(ベストスコアを使用)
大阪府の仕組みでは、たとえば英検2級を持っていれば、当日の英語の筆記試験で何点を取っても満点の80%が保証されます。複数回のチャンスがあり、自分のベストスコアを使えるのが特徴です。
対して東京都のESAT-Jは、全受験生が同じ日に同じテストを受ける「一発勝負」。公平性を重視した設計とも言えますが、当日の体調やメンタルの影響を受けやすいリスクがあります。
どちらが優れているかは一概に言えません。ただ、東京都の仕組みは「年1回のテストに入試の一部がかかっている」という特性がある以上、それを前提にした準備が欠かせないということは押さえておきましょう。
まとめ|ESAT-Jは都立高校入試をどう変えたのか
ESAT-Jの導入によって、都立高校入試は「筆記+内申」の1000点満点から「筆記+内申+スピーキング」の1020点満点へと変わりました。
配点20点という数字だけを見れば小さく感じるかもしれません。
しかし、6段階グレードの換算によって素点1点の差が入試4点の差に変わること、平均スコアの上昇で上位グレードへの集中が進んでいることなど、この「20点」が入試に与える影響は決して小さくありません。
制度そのものへの賛否はあるにせよ、ESAT-Jが都立高校入試の一部であるという事実は変わりません。
大切なのは、制度の仕組みを正しく理解したうえで、お子さんが11月のテスト本番で実力を出し切れるよう、早めの対策と体調管理をサポートしてあげることです。
この記事が、お子さんの受験を見守る保護者の方にとって、ESAT-Jを「なんとなく不安なもの」から「中身がわかっているもの」に変えるきっかけになれば幸いです。
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