【生徒の味方でいたい】KEC近畿予備校・KEC近畿教育学院 木村剛代表インタビュー
KEC近畿予備校・KEC近畿教育学院は、2022年で創業48年をむかえる老舗の塾・予備校です。大学受験に強く、専任講師による少人数制クラスに定評があるほか、個別指導部門『KEC個別指導メビウス』も置かれ、様々な生徒ニーズに対応しています。
創業から48年にわたり、多様化する学習塾業界の中でどのような変化を遂げてきたのか、木村剛代表に詳しくお話をうかがいました。
- 木村 剛先生
- KEC近畿予備校、KEC近畿教育学院
代表取締役
KEC教育グループ創業のきっかけは?
ーー本日はよろしくお願いします。さっそく、KEC教育グループの歴史について教えてください。
創業者で現会長でもある父が、高校や民間教育機関に勤めていたのですが、子供たちのことを本当に想っておこなっている教育はなかなかないと思ったそうです。それなら自分でやろう、と始めたのが当塾の始まりです。
ーー何年ごろのお話ですか?
1974年、高度経済成長期のなかで景気が後退した時代です。
塾を開いて1、2年後には、1教室300人(※1)になったそうです。当時は、塾すらほとんどなく、通うのはごく一部の人だけだった時代と聞いています。
(※1)学習塾1教室あたりの平均生徒数は、集団塾で80名、個別指導塾で40名といわれる。
当時は学校が荒れていた時代でもあり、「荒れるのは心の寂しさが原因にある」と父は言っていました。勉強は1回ドツボにハマると、自分自身の力ではなかなか這い上がれないので、優秀な子だけでなく、これから勉強を頑張る子も合わせて、分け隔てなく預かることにしたそうです。学力に関係なく、授業に来た生徒全員に楽しんでもらいたい。学び続けることが大事なので、学ぶことから離れていった子たちも巻き込むようにしていたそうです。
創業期の教室
小さな倉庫から始まった
ーー創業初年度に300人も集まるとは、順調なスタートだったのですね。
いいえ、そんなことはありません(笑)商用のテナントを借りるお金がなかったので、倉庫で始まりました。父がビルのオーナーに相談したら、「空いている倉庫があるからここ使っていいよ」と。倉庫みたいな場所で生徒が来るなんて今では考えられませんね(笑)結局は子供のためです。
当時は、国際人の養成に力を入れていました。特定の曜日には、日本語禁止の時間があったみたいですね。英語オンリー。今でこそ社内公用語を英語にしようという企業が出てきていますが、昭和49年にやっているのは凄いですよね。現在は日本語禁止ルールはないですけど、そういうスピリットは持ち続けています。
創業者・木村節三氏 デスクには『日本語使用禁止』の張り紙が
ーーちなみに、KECの塾名の由来は何ですか?
はい、『近畿エデュケーションセンター』です。近畿のKですね。社名の変更はありません。 最初からKECです。
授業スタイルについて
ーー続いて、現在の塾の様子について教えてください。
当塾KECは、基本的には、大学受験を目指す高校生を対象にしています。
所属生徒の構成は、65%が高校生、20%が中学生、残りが小学生です。
ーー高校生が多いのですね。多くの学習塾では中学生が半数を超えますから。
高校生が圧倒的に多いんですよ。大学受験では高校3年生になって受験に使わない科目もたくさん出てきます。逆に、英語は基本的に文系・理系とわずどなたも必要です。当塾は英語に力を入れているので、高校生の比率が高くなります。
ーー続いて、小中高生への指導について特徴などを教えてください。
当塾の通常コースが他塾と違うのは、「中学生も大学受験に向けて頑張ってもらう」ということです。中学受験対策はやっていないので、公立中学に進学する生徒が原則対象なのですが、そこも大学受験に向けてっていう話をしていますね。
大学受験は塾・予備校としての一つの中間目標に過ぎません。やはり社会で活躍できる人材を育成していくのをベースに組み立てています。学校での勉強では大学受験が一旦のゴールになるので、大学受験を常に意識してもらっています。
ーー中高6年間を預かるということですね。
はい。当塾では、中学卒業から高校入学の継続率が70%です。他塾の塾長から「すごいなあ」というふうに羨ましがられるんですけど、うち的には、最初から「大学受験するならここで」と言っていますので。
ーー70%の継続率なんて、初めて聞きました!指導時にこだわっている点はどこですか?
中学生指導のこだわりは、自分で考えて問題が解ける訓練を徹底しているところですね。「課題解決の学習」を中学生の間に鍛えてもらう、をテーマにしています。
ーー公式ホームページの代表メッセージに『自学自習』と書いていらっしゃいますね。
そうですね。「受験は成長のために誰かが作ったハードルだ」と僕は位置づけをしてるんですね。成長するためのハードルを、大人の力で乗り越えたって意味ないですよね? 社会に出たときに、未知なる課題に本当に出会うわけですよね。多くの場合は、自分で乗り越えないといけません。そういう力を身に着けるには、勉強が一番いい方法だと思います。もう一つの特徴として、最近の塾は、1教室あたりに生徒集まらないから少人数化してるとこが多いですよね? うちは最初から上限25名っていう設定でやっているんです。
ーー最初からですか?
はい、中学生20名、高校生25名という設定でやっています。1対50とかになると、個々の性格とか、今どのように問題解いてるのか、そういったことを、講師側が把握できなくなります。講師が生徒の様子をしっかりと掴んで、それを授業に反映し進めていくことで、生徒としっかり対話をして授業をすることができます。それを実現するには1対20や25のほうが適しているんです。
1対1の個別指導の場合、どうしても単価が高くなります。いい先生をつけて、しっかり生徒との対話をして、生徒の状況をしっかり掴んで授業ができる上限が25人。小中学生だったら、上限20人。そこを目安にしています。25人になると、一人一人見るのは、大変になります。そこで、講師たちには、「高校生であれば20名、中学生であれば15名を超えたら、クラス分けをする準備をしておいてください」と伝えています。創業からずっと、生徒と先生がしっかり対話して授業を進めていける環境を作っています。
どんな生徒が通塾していますか?
ーー所属生徒についてお聞きします。学力層でいうと、どのあたりの生徒が通塾していますか?
集団授業コースは、学力が中レベル以上の子ですね。うちは関西にあるので、基本的には国公立、または関関同立を目指す生徒が多いです。高3では産近甲龍を狙う子が通い始めることもあります。
プチ自慢すると、中1から高3まで通ってくれた生徒の85%は国公立または関関同立に進学しています。公立高の生徒でも頑張ったら、神戸大には行けます。一方で、東大、京大、阪大レベルとなると、多種多科目を高速処理しなければならないので中高一貫6ヶ年の子たちが有利にはなりますが。
ーー最上位、たとえば京大にも対応できるということですね。
はい、十分対応できます。
ーー伸びづらい生徒、塾に合いやすい生徒などの傾向はありますか?
伸びにくい子はいないです。なぜなら、学習が進んでいない場合、まず一緒に作戦を立てるからです。話を聞き、ステップを設定して、こういう形で始めよう、と。一番困るのは、保護者の方にいち早く成績が上がることを求められるケースですね。一定期間は、成績が上がるのを見守っていただくようにお伝えしています。
ーー短期の詰め込みで成績を出すより、中長期で学力の基礎を育てることを徹底しているということですか?
そうですね。反対に、個別指導部門では、基本的に公立の中学生がメインで構成していて、定期テストが平均点に満たない子が多いです。こういった子たちに関しては自信をつけさせてあげることが一番大事です。そこで、いち早く成績に表れる形の指導をしています。成功体験を積んでもらって、今度は自分だけでできるようにしようと指導します。クラス指導と個別指導で明確に違いを作っています。メビウス(※2)部門では、知っている問題をたくさん作り、「知っている」状態で定期テストにのぞんでもらいます。
(※2)メビウス:『KEC個別指導メビウス』の呼称。個別指導ブランド。
KEC個別指導メビウスとKEC近畿教育学院のちがい
ーーKEC個別指導メビウス、KEC近畿教育学院の違いについて教えてください
KEC近畿予備校・教育学院には入塾テストがありますが、メビウスにはありません。メビウスは定期テストをご持参いただき判断します。あくまで目安ですが、学校の定期テストが平均点以下であればメビウス、平均点を超えていたらKEC近畿学院ですね。もちろん個々の事情もあるので、じっくりお話を聞いてご提案しています。
ーー高校生も同じような基準で決めてよろしいですか?
高校生の場合は、大学受験をする気があるかないかだけです。大学受験をする気があればKEC近畿予備校を薦めます。
大幅な進路変更が起こった場合、私たちは生徒の意思を尊重します。
ーーもう少し突っ込んだ質問を良いですか? 当初は大学受験を目指してKEC近畿教育学院/予備校に入った生徒がいたとします。しかし、その後「自分は何か専門学校行きたい」と進路変更する場合は、どのような対応をしていますか?
進路変更、大歓迎です! とはいえ、保護者と戦うときはありますね(笑)
たとえば、ある生徒がパティシエになりたいと思い、自分で製菓の専門学校を探して、「私はお菓子の勉強したいから」と。保護者から「うちの子なんかあの専門学校行きたいって言ってんねんけど、でも私としては大学受験をさせたいんです」と。
ーーありそうなケースですね。
うちの回答は明確です。「本人がパティシエになりたい、そこで思い切り応援させてあげるのが一番いいんじゃないですか」と。とはいえ、「勉強しなくていいってわけではないので、ちゃんと学校の勉強とかはしっかりされることを条件に応援されたらどうですか?」と話をすることはあります。
ーー営業面を優先して、「塾をやめたらダメだ」とはならないのですね(笑)
それはあり得ませんね。実際にあった例でお話しましょう。動物看護師になるための大学の学科はないということは意外と知られていません。獣医さんは獣医学科がありますが、いざ動物看護師になりたいと思ったら、専門学校に行くべき。
でも、保護者は近大の農学部の生物なんとか学科に入れようとする。われわれからどちらを選ぶべきとは言えませんが、選択肢・正確な情報をお伝えすることが塾の役目であると考えています。
ーーそうですね。進路は生徒も保護者も悩むところですね
生徒が安易に「勉強がしんどいから」と逃げているのはわかるので、もちろんそこは見極めて、話はしますよ。でも、原則、生徒たちが自分で将来を考えて選んだものであれば、生徒たちを応援します。塾は続けたい人が続ければいいと思います。塾の月謝もかかることなので、進路変更で塾を辞めるのもやむを得ないと考えます。ちなみに、当塾のスタッフが個人成績や会社の業績のために通塾を続けさせるようなことがあったときは、確実に叱責対象です。ご本人、ご家庭の意思を尊重します。
半数が異業種からの転職、社会人経験がいきる講師陣
ーー講師の採用基準について教えてください。
講師の採用基準については、学力ももちろんみますが、それ以上にしっかりと人と向き合うことができるかを大切にしています。他塾をやめてうちに来る先生も多いですけど、本当に欲しい人材は異業種の方です。前職が営業マンでも、エンジニアでも、研究員でも、他の業種の方が望ましいです。
ーーそれはなぜですか?
自然なキャリア教育ができるかです。原則、新卒採用はしません。理由は、ほとんどの場合、教職に就く方は大学を出てそのまま指導に入るケースが多く、今まで勉強したことがどう活かされているのか知らない方がほとんどだからです。
ほんの一例ですけど、当塾の大学受験科の責任者って、前職が新日鉄のエンジニアなんですよ。明石海峡大橋をコーティングする材料を開発した科学チームにいたんです。だから、化学の授業中に「前の仕事のときにこんな感じで役に立ったよ」みたいな話が自然にできるんですよね。
当塾に入ってくる社員・講師は、塾経験者が半分、残り半分が異業種からです。
『社会人になってぶつかった課題をどう解決したか』、異業種の方は経験を科目内容に置き換えて話すことができます。これは生徒のためにもいい影響があります。異業種の先生は、大歓迎です。
【KEC教育グループ:採用の問合せ先】
ーー採用後はどのような研修をしていますか?
授業の実践トレーニングを最低十数回はします。さらに文系と理系に分かれて月に1回、指導研究会を開いて、こういう指導の仕方はどうだろう、という発表会を実施します。最近取り入れた取り組みでは、ベテランと新人を組み合わせて、定期的にベテランが新人に対してトレーニングするバディ制があります。
ーー講師の中には元生徒も多いですか?
元生徒は数名います。しかし、先ほどと同じ趣旨で、新卒で塾の先生になるのはもったいないと思っているので、入社したいと言われても最初は断っています。もし2回目に入社したいと言われたら、やはり「一度は社会に出たほうがいい」という話はしますが、それでも働きたいと言うのなら採用を検討します。
ーーそうですね。塾業の難点は、同じ場所で、人間関係が固定されがちというところですね。
やはり業界が狭いので、多種多様な意見や人材が欲しいですね。
声をかけやすい雰囲気づくり
ーー教室の雰囲気について教えてください。
受験直前はピリピリしていますが、それ以外は和気あいあいです。コロナが拡大してそこが寂しいところですね。教室に関しては、職員室みたいな完全にドアで囲った空間はありません。できるだけ生徒がちょっと声かけやすい雰囲気を作っています。
生徒の自主性を尊重したい
ーー入退室管理システムなどセキュリティについて教えてください。
入退室システムはあるんですけど、必須ではなく、希望制にしています。理由は、僕が中学生のときにそんなの使われたら嫌だからです(笑) 好きな子や彼女ができても、帰りにデートとかできないじゃないですか。親から「何してたん?」ってなったら嫌じゃないですか(笑)
入退室システムを使っていない生徒の方が多いのですが、安全面への配慮は気をつけています。たとえば中学生が22時過ぎて教室に残る場合には、教室から電話を入れています。「宿題をやり切ってから帰ると言うので、もう少しお待ちください」みたいに。こちらから積極的にすすめたりとかはないですね。生徒の自主性を見たいので。たまにはさぼりたいときもあるでしょうし。
ーー木村先生が学生時代に入退室システムがあったとしても、使っていなかったでしょうね(笑)
個人的な話ですが、高校の時に同じ子に2回ふられているんですよ、告白して。その日に塾とか行く気なれない。入退室システムとか邪魔ですから。誰もいないとこでボーッとしてたいです(笑)
そんな時に塾に行ってノリノリで勉強とか無理ですよ、なんかリセットした方が絶対いいっすよ。僕のクラスでは、どうしても好きな子に告白をしなければならなくて、それがたまたま僕の授業の時間とかぶるのであれば、それは「行ってきなさい。無料で補講するから」って言います。
ーー生徒への愛が溢れていて、生徒の自主性を徹底して尊重していらっしゃいますね。
子供って自分たちで勝手にいろんな経験するんでしょうけど、縛られたら経験できるものもできなくなります。うちは地球上で一番生徒の味方な塾なのかもしれません。それが保護者にとって不都合なときは、対立しないといけないですね。あくまでもちゃんと客観視してですけどね。
もちろん親御さんが大事に育てられているお子様なので、親御さんのご意志が大事なんですけど、基本的には子供たちの味方に立って物事を判断して、親御さんとお話ししていくっていうことが必要だと考えます。同じように、親御さんは、子供に対して第三者的立場になれません。
本当は絶対的味方であるはずの親御さんがあまりにも、自分ごとになってしまって、気づけば親と子供と敵対関係みたいな形なってしまうことが多々あります。
そんな時に、我々のようなものが子供の味方に立ってあげるのが子供たちにとっては必要なんだと思います。
ーー地球上で一番味方の塾!素敵ですね。ありがとうございます。
取材協力:KEC近畿予備校、KEC個別指導メビウス