【生き生きと生徒が学べる場を作る】練成会にインタビュー
練成会は1977年創業の老舗集団指導塾です。生徒が自ら学べるようになることを目指し、入試の先を見据えた力を身につけるための指導を行っています。
今回は練成会のゼネラルマネージャー伊林先生に、練成会の文化や集団指導のメリットについて、お話をうかがいました。
- 伊林 雅広(いばやし まさひろ)先生
- 練成会事業部ゼネラルマネージャー。大学時代に学習塾講師のアルバイトを経験したことをきっかけに、練成会に入社。最初の配属エリアの旭川では教室長、英語科主任などを歴任し、2012年の滝川練成会の新規開校に携わる。その後、エリア統括を経て、2022年より現職。集団指導部門の責任者として全道8エリアの運営に携わっている。
北海道東北地方の集団指導塾「練成会」
ーー本日はよろしくお願いします。まずは伊林先生のお仕事についてお聞かせください。
よろしくお願いします。練成会は北海道と東北地方に展開していて、私は北海道の札幌を除いたエリアの集団指導部門を担当しています。
主な業務は教室運営の管理です。教務や指導といった授業力向上に向けた教務企画、さらに使用する教材の決定にも関わっています。つまり、担当エリア内の塾運営全般に関わる責任者として働いています。
ーーありがとうございます。全般的な責任者となると、各教室に行くこともあるのですか? 北海道は非常に広いですが……。
はい、実際の授業の様子を見るために各教室を定期的に回っています。基本的には電車移動です。ただおっしゃる通り、北海道は広いので、飛行機を使うこともあります。端から端まで電車で移動すると6、7時間かかりますので(笑)。
ーー北海道の入試の特色や通塾率、教育熱についても教えてください。
北海道の入試傾向からお話しします。まず、公立高校志向が強いのが特徴です。私立難関校よりも地域の公立トップ校を目指す生徒が多い傾向にあります。
とはいえ、少子化の影響で地域のトップ校ですら定員割れしているエリアもあります。このような状況では、高校合格のための指導だけをしている塾に生徒は行く必要がありません。
そのため練成会では、生徒や保護者に対して「高校合格はもちろんのこと、その先の大学受験も見据えて今から準備しましょう」と提案をしています。中学生の段階から将来を見据えた学習計画を立てることの重要性を伝え、それに沿った指導やサポートを行っています。
現に、北海道の高校生の大学進学実績は年々落ち、他都府県の高校生に学力で大きく負けてしまっているという状況があります。ですので高校に入ることではなく、その先を見ての勉強・指導の必要性が高まっています。
これは北海道に限ったことではなく、日本全体の傾向として子どもの数は減っています。塾=高校受験に受かるための場所ではなくなってきていると感じます。
ーー定員割れしているエリアは多いのですか?
一部のエリアでは、定員割れの傾向が進んでいます。その他のエリアでも、年によって多少の変動はありますが、定員割れが起きている高校があります。定員を満たしている高校でも、倍率は1.2倍程度にとどまっている高校が多くを占めているのが現状です。
一方、定員をオーバーしている地域もあります。具体的には、旭川、帯広、函館の3エリアが挙げられます。これらのエリアでは、上位3番手の高校までは比較的高い倍率を維持しています。
集団指導でAI教材を導入? ひとりひとり異なる学力や学習能力への対応
ーーそうなると、先生がおっしゃる通り、塾の役割も変わってきていると思います。他塾との違いや指導の特徴についてお聞かせいただけますか?
私たちは、塾に通って成績が上がるのは当然だと考えています。ただ、私たちが1人の生徒に関われる時間は1週間で6時間程度に過ぎません。塾のない時間のほうが圧倒的に多いわけです。
そのため、塾がない日でも生徒が自分で勉強できるように指導をしなくてはなりません。塾が成績を上げるのではなく、生徒が自分の力で成績を上げられる状態を作ることを目指しています。
具体的な授業の中身で言うと、中学生はAI教材を使用しています。そのAI教材が、生徒の取り組み状況を細かく見ることができて非常に重宝しています。今までの集団指導は生徒を一括りで見ていましたが、AI教材を使うことによってひとりひとり見られるようになったのが今までの集団指導と異なる点ですね。
また、小学生に関して言うと、本科のクラスにオンライン英会話を導入しました。外国人講師との1対1の英会話レッスンです。読解やライティングの指導も行いますが、話す、聞くという能力の伸長にも取り組んでいます。
ーー一般的な集団指導は講師が1人いて、生徒が複数いるスタイルです。AI教材やオンライン英会話はどの時間で使うのですか?
ひとつは授業の後半部分です。その日に取り組んだ内容とAI教材を紐づけて問題演習に取り組んでもらいます。あとは家庭学習の時間に使ってもらっています。
ーー家での学習状況もわかるというのは画期的に思えます。
ご家庭の負担を減らすという意味でも、入塾の際に1人1台、タブレットを貸与しています。学習時間や学習の傾向がすべてデータとして蓄積されるため、家での勉強状況も把握できます。
集団指導のメリットは「場の力」を生かせること
ーー個別指導が一般的になって久しいですね。練成会にも個別部門はありますが、改めて集団指導のメリットとは何でしょうか?
一番のメリットは「場の力」を生かせることだと考えています。「場の力」とは、集団の中で生まれる刺激や相互作用のことです。
たとえば部活で疲れていてもモチベーションの高い集団のなかに入ることで、「みんながんばってるから自分もがんばろう」といった気持ちになれます。友だちのがんばりを目の当たりにすることで、自然と競争意識が芽生え、学習意欲が高まります。また人(先生)のエネルギーがその場にいる生徒に影響します。エネルギーが伝わる授業を心がけています。
また、個別学習ツールであるAI教材を使う際にも私たちは「場の力」を意識しています。
ーー具体的にどのような取り組みなのでしょうか?
AI教材に取り組んでいる最中には「解き方を教えない」ことを徹底しています。教えてしまうと生徒が「できた気」になってしまうためです。代わりに、リアルタイムで生徒の状況を確認し、適切な声かけを行います。
たとえば、つまずいている生徒には励ましの言葉をかけ、目標を達成した生徒は褒めます。これを全体の場で行うことで、他の生徒も「あの子は目標を達成したんだ。自分もがんばろう!」と全体のモチベーションが上がっていくのです。
そのほかひとりひとりに合ったノートの書き方や、教材への取り組み方も指導しています。
このように、AI教材を活用しながらも、集団指導の利点を最大限に活かすことで、個別学習と集団学習のメリットを両立させています。
ーー1コマの授業時間や具体的な授業の流れ、特に重視されている点などを教えていただけますか?
授業は1コマ80分で、大きく3つの部分に分かれています。
まず授業の冒頭5分程度で「理論訓示」という時間を設けています。これは生徒の動機付け、やる気を引き出す話をする時間です。
その後メインの授業時間が70分程度あります。ここでは講義形式で授業を行います。紙の教材ワークとAI教材を併用しながら授業を進めていきます。
最後に、授業終了前の3分程度で再び訓話的な時間を作っています。
私たちが重視しているのは、授業が終わった後も生徒が勉強したくなるような気持ちで帰宅してもらうことです。生徒の学習意欲を高めるために、授業時間の最後にも訓話の時間を設けているのです。
ーーたしかに家に帰っても続けたくなるというのは大事です。個別指導だと英数を週2コマ+必要な教科といった形が多いですが、練成会の場合、受講必須の科目はありますか?
練成会では、中学生については5教科を指導しています。必要なものは全部、という考え方です。これは高校入試に対応するためです。
ただし、生徒の事情に応じて柔軟な対応も行っています。たとえば、中学1、2年生で部活動が特に忙しい場合は、数学と英語のみのクラスを選択することも可能です。
ーー続いて、通っている生徒についてお聞かせください。個別指導だと学校の指導についていけない苦手な生徒、もしくは学校の指導が物足りない上位の生徒に分かれることがありますが、練成会に通っている生徒はどういった生徒が多いですか?
練成会には主に中間から上位層の生徒が通っています。具体的な割合は、成績超上位層が1〜2割、上位層が約半数、中間層が3割程度です。
「練成会は成績優秀者向けの塾」と言われることが多いですが、そんなことは全くなく、むしろもっと中間層の生徒に来てほしいと思っています。これは、練成会という名前が示す通り、生徒の成績を向上させることに自信があるからです。
ーー成績などによってクラス分け対応がされているのだと思いますが、同じクラス内でも細かいニーズは分かれてきますよね。ニーズに合わせて個別指導を併用できるのでしょうか?
個別指導と集団指導を併用している生徒はいません。個別のニーズはAI教材でカバーできていると考えています。たとえば塾の授業を先取りして、中学生なのに高校の数学を勉強している生徒もいます。AI教材のおかげでそういった幅広いレベルに対応できています。
小学生の頃から時間の使い方を身につけるためのマネジメントノート
ーーでは成績が振るわず、勉強習慣もない生徒の相談を受けた場合、どのような対応をされていますか?
そういった相談がきた場合、まず目標設定から始めます。生徒の「めざしたい」「なりたい」ことを一緒になって考えていきます。ゴールを明確にすることで、自ずと達成のための具体的な行動が決まっていくからです。
やるべきことが決まったら、次に時間管理の問題に取り組みます。多くの生徒は「時間がない」と言いますが、実は時間の使い方が悪いことがほとんどです。そこで練成会では「セルフマネジメントノート」を活用しています。
このノートを使って、生徒は毎日のスケジュールを立て、タスク管理をします。最初はノートの使い方から丁寧に指導し、生徒は自分の時間を効率的に使えるようになります。こうして少しずつ生徒の「できない」を解決していきます。
ーーそのマネジメント指導はどの時間に行っているんですか?
マネジメント指導は授業の冒頭にある「理論訓示」の時間を活用しています。この時間に生徒たちにセルフマネジメントノートを書いてもらいます。
また書かせるだけではなく、ノートを集めてチェックも行います。時間の使い方に問題があればその場でアドバイスもして改善を促していきます。
ーーこのノートは中学生から書いているのですか?
いいえ、小学生から書いてもらっています。
ーー小学生からですか! 時間の使い方を小学生から学べるのは将来的に役に立ちそうですね!
そうなんです。将来的に役立つスキルを早くから身につけてもらうのが狙いです。
練成会では、社会に出ても通用する人材を育てたいと考えています。ですから入試対策だけじゃなくて、その先の人生も見据えた指導をしています。
たとえば、このセルフマネジメントノートは時間管理だけでなく、目標設定や自己評価の習慣も身につけられます。これは、社会人になっても必要なスキルです。
入試も大事ですが、それ以上に長期的な視点で生徒の成長を支援する。そういった文化が練成会には根づいています。
ーー教室はどんな雰囲気ですか?
教室の雰囲気は「心を育てること」を大切にしています。学力が育まれるのは当然として、人としても成長してほしいと考えています。
これを実現するために「練成会の約束」というものを教室に貼っています。たとえば「教室内の知らない人(見学に来られた方)にも元気に挨拶をする」とか「ネガティブなことを言わない」といった約束です。
これらの約束は、教室の雰囲気づくりに重要です。集団指導だから、場の空気が生徒ひとりひとりに影響します。良い雰囲気は学習効果も上げるし、人としての成長にもつながります。そのため、こういった約束を通じて、常に前向きで協力的な雰囲気を作っているんです。
結果として、勉強だけでなく、社会性やコミュニケーション力も自然と身につく。そんな教室の雰囲気を目指しています。
教えることが好きなだけではダメ。練成会の講師採用
ーー今のお話からも受験に合格するための指導を受けるためだけの場ではないことがわかります。しかし、やはり塾である以上、どんなレベルの指導が受けられるかも大事ですね。では講師の採用基準についてお聞きします。どういった講師を採用されていますか?
まず条件として大学卒業は必要ですが、有名大学出身でなければならないということはありません。
しかし、単に教えることが好きというだけではダメだと考えています。教える仕事が好きなだけなら教師になる道もありますし、他の塾もありますから。
私たちが重視しているのは練成会の理念に共感してくれることです。具体的に言うと以下の素質を求めています。
・目の前の生徒に寄り添える一生懸命さと誠実さ
・子どもの手本になれるような大人であること
・人に興味関心があり、生徒のために本気になれること
私たちの仕事は単なる知識の伝達ではありません。これから長い人生を歩む、可能性に満ちた若者と接する仕事です。だからこそ、生徒ひとりひとりの成長に真剣に向き合える講師を求めています。
ーー研修ではどういったことをされていますか?
一般的な塾と同じように授業の教え方に関する研修があります。しかし、練成会の研修はそれだけではありません。
実は多くの講師が悩むのは教え方ではなく、生徒への対応なんです。たとえば困っている生徒にどう声をかけるべきか、といったことです。
そこで私たちは新人講師に先輩講師を1人つけるシステムを導入しています。この先輩講師は、生徒対応のアドバイスはもちろん、新人講師のプライベートな悩みまで相談に乗ります。
授業研修以外に、定期的に1対1で話す時間をとっています。先輩講師が一方的にアドバイスするのではなく、新人講師が授業や生徒の関わりで悩んでいることを徹底的に聞き出し、解決策を一緒に考えていきます。また、悩みを溜め込んだりすることもなく、安心して授業に臨むことができます。
このような取り組みで、会社全体として講師の指導力・生徒対応力を向上させていくのです。単なる知識の伝達だけでなく、生徒との関係づくりも含めた総合的な指導力を育成しているわけです。
ーー練成会は昔からある集団指導の塾なので、集まる講師はレベルが高い人が多いのでしょうか?
実は最初から指導経験豊富な人ばかりが応募してくるわけではありません。
ただ最近うれしい傾向があります。昔、小中学生時代に練成会で学んでいた人が講師として戻ってきてくれるケースが増えているんです。
彼らは練成会の教育方針をよく理解していますし、自分の経験を生かせるんです。生徒の気持ちもわかるし、練成会の文化も知っています。
ですから必ずしも最初からハイレベルな講師ばかりではありませんが、練成会の理念を体現できる講師が育っていく。そんな好循環が生まれているんです。
生き生きと気持ちよく学習できるための学習環境
ーー教室環境の改善や安全への取り組み、保護者とのやり取りについてお聞かせください。
教室環境、安全、保護者とのコミュニケーション、それぞれについてお話しします。
まず、教室環境についてです。私たちは「教室チェックシート」を導入しています。これは、生徒が気持ちよく学習できる環境を維持するためのツールです。具体的には、教室の清潔さ、照明の明るさ、空調の状態などをチェックしています。
目指しているのは、生徒が「今日、塾に来て良かった」と思える雰囲気づくりです。生き生きと授業に参加できる環境を心がけています。
安全面では、塾生証を導入しています。これは単なる身分証明書ではなく、塾への入退室時に保護者に自動で連絡が行くシステムになっています。さらに、各教室で生徒の出迎え・見送りも行っています。これは練成会のこだわりの一つです。
保護者とのコミュニケーションも大切にしています。電話や対面での面談はもちろん、共働きの保護者が増えている現状を考慮して、LINEでの担当講師とのやり取りも可能にしました。
これらの取り組みは全て、生徒が安心して学べる環境を作り、保護者の方々にも安心していただくためのものです。学習環境、安全、コミュニケーション、この3つが揃って初めて、良い教育ができると考えています。
前向きに勉強したくなる環境をぜひ一度体験してほしい
ーー練成会を生徒にとって塾をどんなところにしたいと考えていますか?
まず何より、「わかった、できた」という成功体験を積める場所にしたいと考えています。これは学習塾として当たり前かもしれませんが、本当に大事なことだと考えています。
勉強すること自体が楽しいと感じられる、家に帰っても自主的に勉強したくなる、そんな状況が理想です。
さらに欲を言えば、練成会に来ること自体を楽しみにしてもらいたいと思っています。友達と一緒に学ぶ喜びを感じられる場所、そんな塾であり続けたいです。
ーー最後にこのインタビューを読んでいる保護者へメッセージをお願いします。
まず、お子さまの成績が伸び悩んでいる場合、その原因の多くは学習習慣が身についていないことにあります。
そういった悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度練成会に足を運んでみてください。お子さまが前向きに勉強したくなる空間を実際に体験していただきたいです。
また、塾での様子が見えないことへの不安も理解しています。だからこそ私たちは、お子さまの塾での様子をしっかりと共有することを大切にしています。
安心してお子さまを預けていただける環境づくりに努めていますので、ぜひ一度、練成会の雰囲気を感じに来てください。お待ちしています。
ーー本日はありがとうございました。
取材協力:練成会