【定額制・低料金で5科目指導を実現】川西市に密着した個別進学塾ipsim山本玄代表インタビュー
個別進学塾ipsim(イプシム)は、新しい個別指導の形を確立し、定額制「学びホーダイ」を特徴として、兵庫県川西市で3教室を展開しています。今回は代表の山本玄先生に、創業からの沿革、教室運営、低価格で学びホーダイを提供する仕組みについて詳しくお話をうかがいました。
- 山本 玄(やまもと げん)先生
- 個別進学塾ipsim(イプシム)代表
1985年生まれ、関西学院大学理工学部卒。
大手個別指導塾で、直営教室生徒数関西No.1&関西史上最高の売上・生徒数を記録。2017年11月、兵庫県川西市で個別進学塾ipsimを開校。開校初月で36名が入塾、わずか5ヶ月で生徒数地域No.1へ成長。現在は学習塾業界の労働環境を変えるため、業界一のホワイト企業と地域で一番信用される塾を目指す。
ブラックな働き方をなくした塾を作りたい
ーー本日はよろしくお願いします。さっそくですが、塾の創業のきっかけについて教えてください。
中学生のときに友達に勉強を教えるのが楽しくて、中3の秋ごろから自宅に友達を呼んで「塾ごっこ」をしていました。もともと『ザ・コンビニ』『バーガーバーガー』のような経営シミュレーションゲームが好きだったんです。
これらの経験から、塾経営をやる! と決めていて、漠然と30歳ぐらいに自分の塾を作れたらいいなと考えていました。
「中学時代から塾を作りたかった」と語る山本玄先生
ーー中学生で塾を作りたいと思うのは珍しいですよね。個別進学塾ipsimの開塾までのキャリアについて教えてください。
大学時代には家庭教師をやりつつ、小さい部屋を借りて友達をアルバイトとして雇い、学習塾を運営していました。しっかり業界のことを学ぼうと思い、学習塾を運営する企業に正社員として就職しました。
当時は「教えるのが好き」という思いだけで塾業に励んでいました。その後も複数の企業で働きましたが、塾業界の人たちの働き方に衝撃を受けました。いったいどこまで働かせるんだ……と。
ーー具体的にはどういった環境だったのでしょうか?
毎日12時間以上の労働、週に1日休みがあれば良いほうで、年明けから入試の期間は休みも少ない。家庭を持つ上司や先輩たちは、家庭が上手くいっているようには見えなかったのです。当時、私は独身でしたが、休みの少なさから友人との関わりが減っていく寂しさを強く感じていました。
塾業界の働き方に大きな変化が起きたのは2016年以降でしょうか。労働問題を扱うNPO法人の活動が活発になり、次々と学習塾のアルバイト講師の劣悪な労働環境が表に出始めました。その後、塾業界の労働環境は多少改善されつつはあるものの、改善された塾はごく一部でしょう。
そんな塾業界のブラックな部分を改善した会社を作りたいと強く思い、2017年の11月に個別指導塾ipsimを開校しました。
個々の課題に取り組む生徒たち
ーー生徒のことはもちろん、働く社員のことも大切に考えていらっしゃるんですね。
そうですね、うちの塾は業界の中では休みが多いです。年間120日ぐらいですかね。いまだに休日出勤が多く、募集要項に記載されている年間の休日数よりも実際の休日数がかなり少ない塾もよくあると聞きます。実際に私もそういった経験をしましたが、当塾では最低でも115日以上の休日は毎年確保できるように努めています。
さらに、働き方に関しても自由度を与えています。もともと塾の仕事には、仕組み的に休暇の取得や勤務時間に融通がきかないことが多いのですが、社員が自分で休みと勤務を決められる日を一定数設けています。
映像授業を活用した「個別・進学指導」
ーーつづいて塾の指導についてお聞きします。塾名に「個別」「進学」と入っていますが、どういった指導スタイルですか? 一般的な個別指導との違いを教えてください。
一般的な個別指導塾では、主に大学生の講師が生徒の横について、1コマあたり60分から90分程度の授業や演習管理をします。当塾では個別にカリキュラムを作成し、映像授業を受講させ、講師が横について指導するという、ミックスした指導スタイルをとっています。
業界ではこれを「自立型指導」と呼ぶようですが、いわゆる一般的な個別指導塾が提供するサービスに問題点を感じ、それらを改善した個別のサービスを提供したいという思いで現在の指導スタイルに行きつきました。
ーー映像授業を使う生徒側のメリットについて教えてください。
無駄なものを省きたいという思いが強いんです。
以前、集団指導の塾で働いていたときは、毎年同じ時期に同じ内容を教えていました。全国で同じ時期に同じような内容を多くの講師が教えているんだなと。しかも講師のレベルも違いますよね。だったら、講義が上手な講師の映像授業を見てもらえればいいじゃないかと。特に単元の導入部分の説明はそのほうが効果的です。
ーー保護者から「映像授業だと見せっぱなしになるのではないか? 映像を使うなら自宅でもできるのではないか?」といった質問は受けませんか?
映像授業と言われると、特に受講者が小中学生となれば不安に感じる保護者もいらっしゃると思います。映像授業を見てもらう上で非常に大切なポイントは「生徒を受け身にさせない」ことです。自分一人の環境、あるいは自宅で映像授業を活用するのは難しいです。
当塾では、受講中にスタッフからの声かけ、確認テストによる理解度チェック、1対1の生徒面談を定期的に実施します。密度の高いコミュニケーションの中で映像を活用できるようにあらゆる工夫を施しています。見せっぱなしになることはありません。
見せっぱなしにならないように講師がカリキュラム、理解度を確認している
また、映像授業の運用には、保護者にとって大きなメリットもあります。人が教えなくてもいいようなところは、映像授業に任せてしまったほうが、大幅にコストダウンができます。コストを下げればご家庭の経済的な負担も減り、指導を受ける時間を大幅に増やせます。
一般的な個別指導塾では単価が高いがゆえの複数の教科を受講できないという問題がありますよね? しかし、当塾では映像授業を上手く取り入れてコストダウンができたことで、講師が個別に指導しながら十分な時間の5教科指導を実現できています。
ーー参考までに中学生の月謝について教えていただけますか?
中3の1学期までは共通で25,300円で、中3の秋以降は、ほぼ毎日通塾できて30,000円ぐらいになります。
ーー受験生が毎日通塾できて、この月謝ならとてもお安いですね!
個別進学塾ipsimの4年間の歩み
ーー塾のある兵庫県川西市において保護者・生徒の教育熱は高いでしょうか?
ここ数年、公立高校の定員割れが起こっているため、必ずしも皆さんの教育に対する熱が高いとは言えませんね。塾もそこまで多くはありませんし、大手学習塾の参入も少ない地域だと思います。また、中学校によっては内申点を取りやすいというメリットもあるので、そこはチャンスと捉えて生徒の志望校合格に向けて戦略を練っています。
ーーそういった比較的競争が激しくないエリアであっても、開校間もなく満席になっていますよね? 何か特別な広報活動はされたんですか?
特別なことはしていません。個別指導塾に通っていても成績が上がらなくて困っている方に向けて、「うちなら解決できる」ことを訴求しました。それが地域に伝わった結果、お問い合わせをいただけただけだと思います。
ーーということは、お問い合わせはすでに塾に通っている転塾希望の方からが多いのでしょうか?
そうですね。開校時はちょうど保護者、生徒が塾探しをするシーズンだったので、地域の塾から約10名ずつ転塾のご相談を受けました。現在は、地域の方々に認知をしていただいているので、初めて塾に通おうとしている生徒、保護者からのお問い合わせも増えています。
ーー現在、川西市内に複数の教室を運営されていますね。教室の展開についてお聞かせください。
2017年11月に山下教室を開校して、2020年に川西能勢口教室、多田桜木教室を出しました。教室を出すのは川西市の中でも600名以上生徒がいる中学校の近くと決めています。でも、積極的に多店舗展開をしたいとは思っていなくて、「いい人が採用できたら教室を出そう」くらいで考えています。
ーーコロナ感染の拡大期に2教室も出して大変だったのではありませんか?
そうですね。開校が決まって準備している時にコロナが流行しました。全国の学校で一斉休校があったり、あらゆる業界で対面のサービスに制限がつくなど、たしかにピンチではありました。
とはいえ、良い人材が採用できたら出店するというスタンスなので、むしろプラスにとらえていた部分も大きいですね。現在は、中学生、高校生への指導だけでなく、教室の休校日を使ってプログラミング教室を開き、より広い年齢層へサービスが提供できるようにしています。
プログラミングの指導の様子
ーー教室や、通われている生徒たちの雰囲気について教えてください。
一般の個別指導塾は多くの学生講師を使いますが、うちは正社員の教室長がワンオペなので、教室ごとのカラーはバラバラです。というのも、「生徒に自主性を求めるなら、まずは教室長の自主性を尊重すべき」と考えているので、細かい指示は出さないようにしています。指導についても大枠のカリキュラムはありますが、社員から「これを使いたい」という声があれば採用するので、使用する教材も教室によって一部違うんです。
ーーなぜ兵庫県川西市での展開にこだわるのですか?
大阪へのアクセスの良さや、他にもいろいろな立地条件で探していたら、たまたま川西市内にいい物件が見つかったんです。川西市はお笑いコンビ「キングコング」西野さんの出身でもあって、きっと面白い出会いが多くあるんだろうなと思って決めました。
ちなみに2022年の4月に地元のサッカークラブチームのスポンサー企業になるんです! J1、J2……と数えてJ9のチームですが(笑)。地元に愛される企業になれたら嬉しいです。
講師にも外の世界を見て欲しい
ーー講師採用の基準について教えてください。
人柄、最低限の学歴は見ています。具体的には教務力をもっとも重視しているので、集団授業の塾での指導経験の有無は見ています。前職でマネージャーをしていた経験から、集団授業メインでしっかり教務に携わった講師のレベルは高いと感じています。
うちの指導は個別指導でありながら、複数の生徒の様子を見て適切に声かけ、指導をする必要があるので、個別指導の経験しかない講師には難しいかもしれません。
複数の生徒を指導する経験があれば、演習で詰まっている生徒への指導、映像授業だけでは足りないものや生徒の目標達成に必要なものに気づいて、自ら補填ができます。あとは、一緒に働いていてお互い楽しいかどうかで決めています。
採用後は、生徒から見て魅力的な人間に成長してほしいので、外の世界を見るように促しています。塾での勤務経験しかないと、どうしても偏った世界になりがちです。うちの社員は全員、「オンラインサロンJUST 」に入会してもらい、他塾の先生と交流を積極的に持つように勧めています。また、副業も積極的に勧めていて、異業種の方との交流も深めてもらっています。
ーーオンラインサロンJUSTとはどういったものですか?
オンラインサロンJUSTは、学習塾運営に関するさまざまな情報、ノウハウを共有するコミュニティです。想いは強いけれど、ビジネスが上手くない教育関係者は多いんです。同業者として、営業一辺倒で生徒を集めるような塾に負けてはダメだと(笑)。閉鎖的になりがちな学習塾業界に一石を投じられたらという思いで、「なかま塾」の代表の中島元気先生と私が立ち上げました。さまざまな分野のスペシャリストが集まり、勉強会やイベントを開いています。
気づけば3年半もつづき、北海道から沖縄まで、さらに海外の学習塾にも参加いただき、現在160名の学習塾の塾長、講師、教材会社のメンバーがいます。
子どもに合った塾探しを全力で応援したい
ーーいま塾を探している保護者、個別進学塾ipsimに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
子どもに合った塾を探してほしいと心から思っています。うちは無責任にどんな生徒でも受け入れ、とにかく生徒数を増やすという方針ではやっていません。うちの塾のシステムに合わない生徒に関しては正直に保護者の方にお伝えし、丁重に入塾をお断りします。
「塾選び相談」というサービスを開業時からやっていまして、子どもの状況をヒアリングして、どこの塾が合っているのかを提案しています。今でもホームページのお問い合わせフォームに「塾選び相談」を選ぶ欄があります。もちろんこの相談を通して、うちに入塾してくれる方もいますが、内容を見て他塾を勧めることもよくあります。
ーーとても生徒・保護者を大切にされているのが表れていますね。最後に、生徒にとって塾をどのような場所にしたいですか?
ありきたりですけど、勉強を通して自信を持ってほしいですね。塾で身につけた学習スタイルを、大学生・社会人になっても続けて、自らを成長させられる大人になってほしいです。ゆくゆくは川西市内に卒塾生が集まれるコワーキングスペースを作りたいと思っています。
ーー本日はありがとうございました。
取材協力:個別進学塾ipsim