【めんどうみ合格主義】手厚いフォロー体制が人気の個太郎塾にインタビュー
市進学院・市進予備校グループの個別指導部門である個別指導塾「個太郎塾」。首都圏を中心に230を超える教室を展開しています。「めんどうみ合格主義」という理念を掲げ、生徒に寄り添い指導するスタイルと保護者とのコミュニケーションを大事にし、「面倒見の良さなら個太郎塾」と言われるほどの手厚いフォロー体制が人気です。どの教室でも同じ高レベルの指導を行うための施策や、個太郎塾ならではの生徒との関わり方について、代表の金澤匠時先生にお話をうかがいました。
- 金澤 匠時(かなざわ しょうじ)先生
- 2001年、株式会社市進に入社。16年に個学舎統括本部本部長、19年に個学舎取締役に就任。
20年に代表取締役社長となる。社として「人を創る」ことを大切に、市進ホールディングスの執行役員も務める。
ニーズに合わせて集団塾の指導も受けられる個別指導塾
ーー本日はよろしくお願いします。さっそくですが、個太郎塾がどのように始まったのか教えてください。
市進ホールディングスの一事業部として、個太郎塾の母体である個学舎ができたのが1998年です。1999年に株式会社個学舎となり、本格的なスタートを切りました。個太郎塾の特徴としては、専業で運営をしている他の個別指導塾と違って、集団指導の市進学院との連携が自由にできることがあります。
たとえば、個太郎塾をメインにしながら、定期テストや受験の前は特定の講座に絞って市進学院の集団授業を受けられますし、反対に集団授業の塾に通いながらわからない科目だけ個別指導を受けることもできます。
ーー目的や科目によって指導を選べるのはいいですね。塾に通う生徒の目的として、受験目的、学校の補習メインに大きく二つに分けられると思いますが、個太郎塾の生徒はどちらの層が多いですか?
在籍している生徒の平均偏差値をとると、ちょうど50ぐらいになります。つまり一般的な中学校や高校の平均点レベルですね。そのなかに上位校を目指すタイプの生徒もいれば、頑張って学校の授業についていこうとする生徒もいます。
勉強が苦手な生徒のための充実したプログラムもありますし、難関校合格を目指す生徒には市進学院と連携して、しっかりとサポートする仕組みが整っています。市進学院のカリキュラムやテキストが共有できるので、個太郎塾にいながら高いレベルの指導を受けることが可能です。そのため、一概にどのような学力層の生徒が多いとは言えません。すべてのレベルの生徒を受け入れるためのカリキュラムが充実しているのが、個太郎塾の強みです。
ムラがなくすべての教室で同質の指導が受けられる
ーー他塾と比べて「ここには力を入れている」というポイントはありますか?
たくさんある中で特に力を入れているのは、学習の記録やカリキュラム設定についてです。個太郎塾は、現在230教室を超えています。教室の数が多くなった場合、もっとも大切にしなくてはいけないのは、「どの教室でも一定レベルの質の高い指導が受けられる」ことです。
ーー確かに、教室数が多いと同じ塾でも「あの教室がいいらしい、あの講師がいいらしい」といった話が保護者間でよく情報交換されます。
そうですね。私たちは「すべての教室で、基本的なルールを統一する」という点を強く意識しています。具体的に申し上げると、まず生徒ごとに演習を解いたあとの記録をすべて取ります。できた問題、できなかった問題をすべて記録して、次はそれに対応した宿題を出します。この宿題はただやみくもに出すのではなく、必ずできていない問題と紐づけるようにしています。
最終的に、生徒が宿題を提出したらきちんと理解できているかをチェックするテストを受けてもらいます。そのテストでこのくらいの点数を取れたら次のステップに進む、点数がこれ以下だったらさらに復習をさせる、そういったところまで細かくルールが決められています。このルールはすべての教室に統一しています。
こういったルールを決めずに講師が感覚で宿題を出してしまうと、教室ごとに宿題の内容や量が変わってしまいます。それが、ひいては各教室の指導の差になってしまうのです。また、すべての記録をとっておくことで、定期テスト前などにやるべきこと、やらなくてもいいことが明確になります。これは時間をかけない効率のよい学習にもつながります。
ーー生徒ひとりひとりの学習の記録をとっていれば、講師が変わっても円滑に授業が進められそうです。
生徒ごとにシートがあり、授業のあとに講師が書き込みをします。月に1枚シートを作成するため、それを2〜3枚めくれば、生徒のここ2〜3か月の進捗状況や習熟度がわかる仕組みになっています。
生徒ひとりひとりに用意される学習記録シート(個人情報保護のためぼかしています)
できない問題を徹底して解くスタイルを確立
ーーテスト前に何をすべきか、それを決めるのは講師でも生徒でもなく、学習記録なのですね。客観的に把握でき、「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」の判断も明確にできます。
このようなシステムができあがるまでには時間を要しました。最初は、生徒の定期テストの結果や通知表の結果を全て集約し、講師や教室ごとにわけてデータをとっていったのです。すると、できる講師や成績が伸ばせている教室は毎年着実に生徒の成績を伸ばし続けていることがわかりました。逆になかなか生徒の成績を上げられない講師や教室は何年経っても成果があがりませんでした。
それに気づいたら今度は、順調に成績を伸ばしている教室や講師の指導法を分析し、定型化するようにしました。その結果、うまくいっている教室や講師は各生徒の「できていること、できていないこと」をしっかりと把握していました。そこから導き出されたのが現在の、「できない部分を徹底してやる」指導法です。
生徒から目を離さないこだわりの「1対2」
ーー昨今は個別指導塾のなかでも、1対3や1対4というスタイルが増えてきています。個太郎塾が、講師1人対生徒2人にこだわっているのには理由がありますか?
当塾でも1対1や1対3、1対4など、どのスタイルが最適なのかを定期的に検討してきました。1対3や1対4にすれば授業料が安くできるメリットもあります。
しかし、「きちんと面倒が見れる」「生徒に寄り添える」のはやはり1対2だという結論に至りました。2人の生徒が講師を挟むように座り、講師が1人に解説をしている間にもう1人が演習をする形です。仮に生徒が1人増えて1対3になった場合、どうしても3人目の生徒に空白の時間が生まれてしまいます。やらせっぱなしで放置状態になったり、時間が余った生徒がぼーっとしてしまったりするんです。
原点に立ち返ると、当塾は「個別指導」塾です。保護者に対しても「授業している間、お子さんから目を離しません。安心してください」と責任を持ってお伝えしたい。そのため、今は、1対2が最適だと思っています。
ーー保護者が個別指導塾に求めていることは「子どもと向き合ってほしい」ですものね。個太郎塾にはさまざまなコースがありますが、私は小中学生向けコースの「MANA(マナ)」に注目しました。これはどのようなものですか?
MANAは映像を使った授業になります。個太郎塾の本心としては、保護者や生徒に対して「5教科全てを任せてほしい」と言いたいのです。しかし個別指導塾で5教科指導は、スケジュール面でも金額面でも難しいのが現実です。そこで、映像授業を絡め、3教科もしくは5教科をまとめて学べるシステムを作り出しました。
ーーMANAの専門塾である「スタディジム」も人気ですよね。
スタディジムは、先生1人に対して生徒は最大で6人です。こちらも、生徒の人数に関して何度か検証をしてきましたが、生徒6人が限界でした。他塾では、映像授業の場合1対20とか1対30というところもありますが、しっかり面倒を見られるのは6人が限界と考えています。
私たちの考えとしては、映像授業を使うとしても根本にある指導方針は個別指導塾と同じです。講師の視界に生徒が全員入っていて、ちゃんと進められているか、つまずいていないか、などをすぐに見極められないといけません。そのため、1対6という形をとっています。
ーー人数が少ないほうが、やはり生徒の成績は伸びるものですか?
塾の存在意義としては、「生徒の成績が上がる」ことが第一です。前回の定期テストより点数は上がったのか、合格率は去年より上がったのか。それを教室単位、講師単位、教科単位でさまざまな角度から毎年検証して、どの形式が一番成績が上がるのか分析しています。もちろん、今後時代やニーズに合わせて変化はしていくと思いますが、現状はこれが最適だと考えています。
講師と生徒のコミュニケーションを大事に
ーー長年子どもたちを指導してきた経験から、成績が伸びやすい、または個別指導塾と相性がいい生徒はどういった生徒だと考えていますか?
勉強にもスポーツにも共通することですが、人の話をきちんと受け入れられるかが大事だと思います。先生の言うことに素直に耳を傾けて、それをやってみることができるか。その姿勢があれば成績が伸びるのは早いと思います。しかし人の話を素直に聞けないタイプではダメなのか、というとそうでもありません。入塾時には話が聞けない生徒はたくさんいます(笑)。そういう生徒に対しては塾の腕が試されるところですね。
ーー講師と生徒の関わり方が重要ということでしょうか。
はい。個太郎塾では、講師と生徒のコミュニケーションを大切にしています。高校生の場合、授業のなかで5分間「チュータリングタイム」というものがあり、講師と生徒が話す時間を作っています。チュータリングタイムはまず、生徒に自宅で5分間の入試情報等の映像を見てきてもらうところから始まります。
映像の内容は、「文系・理系の選択の仕方」「総合型入試とは?」「小論文とは何か」といったものがテーマとなっています。その動画を自宅で見てきてもらったら、それを踏まえて授業で講師と生徒が話をします。たとえば「動画見た?」「わからなかったことはなかった?」「現状の部活はどんな感じ?」といったことを聞きます。
このように講師が生徒をきちんと知るための時間を、強制的にでも作ることで、よりコミュニケーションの密度が濃くなります。その結果、生徒が講師の話にさらに耳を傾けるようになったり、講師の言うことを信用するようになります。講師によっては生徒の誕生日まで知っている人もいます。自分のことを知ってもらえていれば、やはり生徒としてもうれしいですから。
ーーただ勉強を教えるだけでなく、人と人とのつながりをとても大切にしているんですね。
はい。私たちは常々講師に「生徒のことを深く知ってください。生徒や保護者のニーズ、求めていることは何なのか。常に敏感にいて察知できるようにしてください」と伝えています。生徒がいま何を考えていて、何に忙しくて、将来は何を目指していて、といったことを生徒から引き出せるのは、一番身近にいる講師ですから。
ーー家族には話せないことでも先生になら本心が話せる、ということは子どもにとってもよくあることですよね。
はい。そうして生徒の話を常に聞いていれば、保護者にもそれが共有できます。特に中学生くらいになると子どもは保護者となかなか話さなくなります。不安を抱えている保護者に、講師が「お子さんはこう言っていましたよ」「きちんと考えて頑張っていますよ」と伝えると、保護者も安心できますよね。
講師は親の次に生徒の理解者にならなくてはいけない
ーー勉強以外にも子どもとの向き合い方など、高いスキルが必要とされる講師や教室長ですが、採用するうえで大事にしていることはありますか?
まず教室長は、直接授業することがあまりありません。教室長の主な仕事は頑張って勉強をする生徒のサポートです。そのため、人のための努力を厭わない人、人の成長に喜びを感じられる人、応援を一生懸命できる人を求めています。
また、サポーター気質がある教室長は、生徒だけではなく講師のサポートもできます。講師が生徒に対して一生懸命やっていることを教室長が応援し、講師と生徒の関係を邪魔しない。それが講師の成長にもつながると思っています。
ーー自分のことを気にかけて、応援してくれる大人が親以外にいるのは子どもの成長にとって非常に重要ですよね。最近の子どもは地域のつながりも少なくなり、大人との交流が減っています。その代わりに塾や習いごとが親以外の大人と交流する場所になっていますよね。
塾という居場所があり、人と出会い、勉強をする。そこで講師が勉強の仕方や復習方法を教えてくれる。いい講師に出会い、勉強の習慣が小学生からできていたら、彼らのその後の人生は大きく変わってくると思います。そのために講師や教室長の研修、学習会も頻繁に行っています。
ーー人以外の面、たとえば施設や設備面でこだわっているところはありますか?
教室のレイアウトは、教室長がぐるぐると見て回れる動線を作りやすいものにしています。教室長は授業中、一ヶ所に座っていることはなく、常に動いて生徒の様子を見たり、講師の接し方や教え方をチェックしています。第三者の目を常に入れることで、問題が起こった場合もすぐに対応できるようになっています。
「あなたはここにいていいんだよ」と安心させられる場所でありたい
ーー個太郎塾は、生徒にとってどういう場所でありたいと思っていますか?
子どもは初めての場所に行ったとき、そこが「自分の場所だ」と安心できるようになるまでに3ヶ月かかると言われています。つまり3ヶ月は塾に来てもみんな落ち着かないんです。そこで私たちはまず生徒に「ここはあなたの居場所だよ」「ここにいていいんだよ」「みんなが受けいれているよ、応援しているよ」と感じてもらえるような雰囲気づくりを心がけています。
たとえば座席表や名簿の名前を間違えていたりすると、生徒は「自分のことなんてどうでもいいと思われているんだ」と感じます。生徒の名前を間違えるとか、小さな約束でもそれを先生が覚えていなかったとか、そういうことがひとつでもあると、そこは「自分の居場所」ではなくなってしまうのです。小さなことにも徹底的に気を配って、「安心できる場所」になるように心がけています。塾が安心できる自分の居場所であって初めて、集中して勉強に取り組めるのです。
ーー現在、塾を探している保護者に対してメッセージをお願いします。
私たちは「本物の塾づくりをする」ことをいつも念頭に置いています。たとえば、イベントを企画したり、カリキュラムを作ったりするとき、「それは本物の塾として相応しいのか?」と問うのです。「本物の塾」を探している人には、ぜひ個太郎塾を検討していただければ幸いです。
ーー本日はありがとうございました。
取材協力:個太郎塾