【映像授業×自立型学習の新しい学びの形】TASUKE塾にインタビュー

深刻な講師不足に直面する学習塾業界で、映像授業を活用した新しい学習スタイルを確立したTASUKE塾。大手個別指導塾で17年の経験を持つ創業者が、「通い放題」「自立型学習」をキーワードに、従来の個別指導とは異なるアプローチで生徒の成長をサポートしています。首都圏11校舎で展開する同塾の特徴と、今後の展望についてうかがいました。

- 﨑山 正樹(さきやま まさき)先生
- TASUKE株式会社代表取締役。家庭教師を高校三年生から7年以上、 集団授業塾を学生時代に3年、大手個別指導塾の教室長として15年以上に渡り勤務。大手個別指導塾の教室長時代は、全国最優秀教室賞(FC全国1位)を何度も受賞。その後TASUKE塾を創業し、現在も代表を務める。
TASUKE塾創業のきっかけ
ーー創業時のきっかけについてお聞かせください。
2015年1月に最初の校舎を開校したので、もうすぐ10年になります。その前は大手個別指導塾を運営するFC企業のマネージャーを務めていました。明光義塾とスクールIEの両方で17年間勤務し、スクールIEでは9回全国1位のFCを達成しました。当時、全国でも最大級の教室で教室長をしていました。
本当は5年ぐらいで独立する予定で運営会社と話し合いを進めていましたが、結局17年間勤めることになりました。当時から「映像授業をやりたい」という提案をしていましたが、なかなか受け入れられずで。独立したら映像授業をメインに使おうと考えていました。
ーーなぜ映像授業だったのでしょうか?
というのも、田舎の個別指導塾では講師の確保が難しい状況だったのです。都会だと1対1、1対2の個別指導が一般的ですが、それが現実的にできないため、だんだん1対3、1対4、1対5といった形になっていき、最後は「1対6で個別指導」というような状況になっていました。
現在は当時よりも講師確保が難しいと思うので、講師集めに悩む塾は少なくないと思います。結果質の悪い授業を提供していることもあるでしょう
また、多少教えるのが上手い講師よりも、第一線で活躍するプロ講師の映像授業の方がわかりやすいことは明白です。ネット回線が今より高速化されれば絶対に広がると確信していました。
ーーそれでも当時は多くの塾が映像の利用に否定的だったわけですね。
そうですね。当時はどの塾でも映像授業に対して否定的だったと思います。「教育分野は直接人に教えてもらう方がいい」と漠然とした雰囲気がありました。
とはいえ、多くの人は日常的にYoutubeなどの動画コンテンツを楽しみますよね? 子どもたちもずっと漫画ばかり読むなんてこともありません。その後Youtubeでも教育系のコンテンツは増え、コロナが流行ってZoomで授業することも当たり前になっています。
私自身、学生時代から集団塾で講師をやっていた経験から、テクノロジーの進化によって教育は変わっていくと思っていました。それで自分で塾を始める時には映像授業を活用したスタイルを取り入れようと決めていました。
ーー個別指導よりも利点は多いのでしょうか?
使い方次第だと思います。本音をいうと、普通の講師に習うよりも100倍マシですね(笑)。講師1人が複数の生徒を教える個別指導スタイルでは、講師が一人の生徒を教えている最中には別の生徒は蛍光灯を見ていたりもします。先生が丸付けをしている間、生徒は待っているだけになっていることも多く、「丸付け係のための講師ならいらない」というのが私の考え方です。
首都圏で11校舎 〜教室の広がり方〜
ーー教室展開状況を教えてください。
現在、TASUKE塾として首都圏を中心に11校舎を展開しています。教室があるエリアについては特に「ここに出店したい」というよりも、当塾のスタイルや理念を理解いただいて、ご縁で繋がった方が開きたいと言った場所に教室を開いています。
われわれ本部としても「フランチャイズ募集中」と広告を打つことはありません。当塾のウェブサイトの隅っこにフランチャイズをやっているのを見て、そこでご縁がつながった方ばかりです。
千葉県東金市の田舎からスタートして、現在は多摩市の聖蹟桜ヶ丘や船橋市の北習志野、前原など、比較的人口が多い地域にも展開しています。茨城県水戸県庁前、勝田の教室などにも出店しています。まだ講師が集まる地域でも当塾のスタイルが多くのご家庭に支持されていることを光栄に思います。
「この教室にいるあの講師の教え方が良くて成績が伸びました」ということ自体は悪いことではないのですが、どんな生徒でもどこの教室でも成績が伸びる仕組みが大事だと考えています。
映像授業の活用に必要なこと
ーー授業スタイルについて教えてください。
小中学生は比較的「Assist」という映像教材を使用しています。また「ウイングネット」も使用しており、時期により学研のコンテンツも使用していました。難関校受験向けの「学研プライムゼミ」はウイングネットの中に入っているため、必要に応じて使用しています。
宿題は毎回出しています。「基礎力定着テスト」という名前の宿題をA4用紙1枚で比較的少なめに出しています。この宿題は全ての解答解説を映像で説明します。特徴的なのは、直近で習ったものではなく、過去に習ったものをあえて宿題として出していることです。
ーー宿題も個々に作っていくのですか?
はい、生徒一人ひとりに必要なものをすぐに用意できる仕組みを整えています。
基本的に定期試験に合わせていきますが、たとえば中3の生徒が連立方程式が怪しいとなったら1次方程式に戻ってもらいます。過去の内容ができなければ苦手を克服することはできないので、復習をメインとした宿題を出します。
ーー生徒は週に何日、何コマ通うのですか?
基本的には50分の授業で10分休憩というスタイルです。当塾は通い放題になっているので、毎日通おうと思えば毎日通えます。10時間くらいずっと塾で勉強をする生徒もいます。定額制で学べるというのは一番のメリットです。質の良い授業を提供するのは当たり前で、学習時間という量をこなせる塾になっています。
それでも「いつでも気軽に授業に参加していいよ」とはしていなくて、講師がそれぞれの生徒に合わせた教材を用意して、日ごとに自分の課題をこなしていきます。生徒に自発性を発揮してもらうための工夫です。
個別指導の経験から座席配置には工夫をしています。「誰と誰は並んじゃだめ」とか、「左利きの子と右利きの子は並び方に気をつける」など、講師が入りやすいような配慮をしています。
ーー自立型でも配置は大事になるのですね。
非常に重要です。高校生はおおむね「私の席はここ」と席が決まっています。中学生たちは来る度にお互い少し変わります。同じ学年の子が隣にならないように、友達同士で盛り上がらないように配慮しています。たとえば、野球部2人が並んだら盛り上がってしまう盛り上がってしまうなど(笑)
自立型の学習スタイルの効果とは?
ーー生徒さんのレベル層についてお聞かせください。自立型のスタイルで学べるのはレベルの高い生徒というイメージを持っている保護者も多いと思います。
実は真ん中以下の方が多いです。個人的な意見としては「トップクラスの子たちは、どうぞ他に行ってください」と保護者に言っています。それでも学年トップクラスの子も在籍してますが、ハイスペックなクラスがある他塾に行くことも良いことと考えています。
ーー経営を考えると勇気がいることだと思います(笑)。
当塾としては、トップクラスではなくて「どうしてもうまく抜け出せないよ」みたいな生徒をお預かりしたいと考えています。勉強できる子は他の塾に行くように勧めており、勉強ができなくて部活が忙しい生徒さんは特に大歓迎しています。当塾の仕組みは勉強が苦手、勉強の仕方がわからいという子の方が学習効果を得られると思います。
ーーなるほど。可能な範囲で、実例を教えていただけますか?
実際の成果として、学年330何人の高校で最下位だった生徒が、1年で学年1位まで行って中央大学に入学したケースもあります。その生徒は多摩市の教室で講師の手伝いまでするようになりました。成績を上げるだけではなくて、日々の勉強を通じて生徒が自分の未来を変える場面に立ち会えるのはこの仕事の醍醐味ですね。
ーーそれはすごいですね。自分で進めるスタイルだからこそ遅れを取り戻せたということですね。
余談ですが、さまざま生徒を見てきて、14時間以上勉強やると腱鞘炎になることもわかっています。本気でやる生徒は、コルセットをつけながら勉強していたり、腱鞘炎になったら高校生がビニールテープで手を巻いたりしています(笑)。あくまで生徒自身が自主的に変わっていった例です。決して大量に宿題を出すような塾ではないです。講師と相談して調整していった結果です。
ーーそんな塾は見たことがありません(笑)。通う生徒は高校生が多いのでしょうか?
そんなことはありません。学年は校舎によって大きく異なります。本部のある東金本校は半分が高校生ですが、他の教室では小学生が多いこともあります。全体で見ると中学生が一番多いですが、特に学年によって当塾のスタイルが合う合わないということはないですね。
保護者とのコミュニケーション
ーー保護者様への対応や進捗報告はどのように行われていますか?
個別指導中によくある夏期講習前の面談のような営業目的の面談は一切行っていません。入塾時に月謝に対して受験生なら2ヶ月分が夏期講習費というように、すべて一律で決めています。料金表も公開しています。
ただし、保護者からの相談は随時受け付けています。「大学受験で学校を変えよう」「文系から理系にしよう」「塾の科目を変えよう」といった相談は、メールでもLINEでも対応可能です。
不登校支援への取り組み
ーー今後の展開についてお考えをお聞かせください。
実際、塾生の中には1週間のうち2回くらい通信制の学校に行けるか行けないかの勝負をしています。1時間電車に乗って、「今日はあの学校まで300mぐらいまでいけたらいい」というような段階的な目標を立てながら取り組んでいます。そういう経緯から、TASUKE塾で不登校のコースを明確に作りたいと考えています。まずは通い放題で、元気があるときだけがんばってもらい、そのタイミングで来られる塾にしたいと思っています。実際に今も複数の相談を受けているので、今後の展開として具体的に検討しています。
生徒が主体的に学べる環境づくり
ーー最後に塾を探している保護者へのメッセージをお願いします。
類似している塾はほとんどない新しい形の塾です。映像授業を使いながら、それを管理する形で効率的な学習を実現していることです。従来の個別指導とは異なり、生徒が主体的に学べる環境を整えています。また通い放題でほぼ固定の月謝ですので、個別指導よりも大幅に低い金額で通うことができます。
部活で忙しい生徒、学校に行けていない生徒、発達障害(自社で放課後等デイサービスを運営しています)をお持ちの生徒など、様々な生徒が通っています。「今行っている塾と違う塾を探している」「新しい形の塾を探している」という方は、ぜひ体験だけでも来ていただければと思います。
基本的に無料体験後の追っかけ営業は一切しない塾なので(笑)、退塾の連絡の際も無理に引き留めることを禁止している塾ですので、お気軽に体験いただければと思います。
ーー本日はありがとうございました。
取材協力:TASUKE塾