大学受験の方式が多様化し、各大学が特色ある受験方式を導入するようになっています。そのぶん対策も複雑になり、それぞれの学校に合わせた準備が必要になりました。
また毎年利用者が増えている総合型選抜や学校推薦型選抜では学力以外の要素も評価対象となるため、独学や学校の授業だけでは対応しきれません。
そのため近年は、大手予備校一辺倒ではなく、目的に合った塾を選ぶ生徒が増えてきました。
そこでこの記事では、大学受験を見据えた塾の選び方について、目的別・入試方式別に解説します。
塾の種類や授業スタイルの違い、通塾のタイミング、費用の目安、情報収集の方法まで幅広く紹介しています。自分に合った塾を見極めるための基礎知識としてご活用ください。
大学受験で塾に通う目的
大学受験において塾は、学力を伸ばすだけでなく、進路を決めるための情報収集や各大学の入試方式に対応した対策を行う場として活用されます。
大学受験では、一般選抜の他に総合型選抜や学校推薦型選抜などの入試方式があり、一般選抜の方式も大学や学部によってさまざまです。
特に総合型選抜を視野に入れている場合は、その対策に特化した塾に通う生徒も少なくありません。
また、限られた時間の中で各大学に合わせた対策を進めるには、スケジュール管理が重要となるため、学習計画や進捗の管理を行う学習指導型の塾を選ぶ生徒も増えています。
大学受験の種類
大学受験には、大きくわけると3つの選抜方式があります。
一般選抜
一般選抜とは、学力検査によって合否が決まる、いわゆる入学試験のことを指します。国公立大学では共通テストと二次試験、私立大学では大学ごとの個別試験が実施されるのが一般的です。
近年は、共通テスト利用や英語外部検定利用(英検やGTECなどの得点が英語の得点として換算される)などの方式を取り入れる私立大学も増えています。
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜は、高校からの推薦を受けて出願する方式で、指定校推薦と公募推薦の2種類があります。
- 指定校推薦とは、大学が指定する高校からの推薦を受け入れる方式で、評定平均(学校の成績)や課外活動の実績、生活態度などが評価の対象になります。
- 公募推薦とは、どの高校からでも推薦できる方式で、評定平均を基準とする公募制一般推薦に加え、スポーツなどでの実績や資格取得などが条件となる公募制特別推薦があります。
総合型選抜
総合型選抜は、学力だけでなく人間性や意欲、適性を重視する入試方式です。
「アドミッションポリシー」とよばれる、大学側の受け入れ方針に合う生徒を選抜するもので、志望理由書や小論文、面接などによって、多面的に評価するのが特徴です。
大学受験向けの塾の種類と費用例
大学受験対策の塾には、いろいろなタイプがあります。
塾の指導内容
志望校や受験方式によって、塾の指導内容が異なります。

難関大学・医学部志望者向け
東京大学や京都大学などの難関国公立大学や、医学部を志望する生徒の多くは、難関大・医学部専門の塾予備校に通っています。
高校1年生などの早い段階からハイレベルな授業を受け、難易度の高い問題演習に取り組むことで、難関大学合格を目指します。
入塾時に学力基準を設けている塾もあり、レベルの揃った集団の中で効率的に実力を伸ばすことが可能です。
国公立・私立大学志望者向け
中堅レベルの国公立大学や私立大学を目指す生徒には、基礎の定着から応用問題への発展まで、段階的に学べる塾が選ばれています。
定期的に模試を受験し、自分の成績や合格可能性を把握しながら実力をつけていきます。
総合型選抜・学校推薦型選抜志望者向け
総合型選抜や学校推薦型選抜では、志望理由書の作成や小論文、面接などがあるため、これらに特化した塾に通う生徒も多いです。
志望理由書や小論文は、その内容が大学の方針と一致していること、またすべての提出書類と面接内容に一貫性があることが重視されるため、徹底した準備が必要になります。
総合型選抜専門の塾では、高校2年生などの早い段階で入塾し、計画的に準備を進めることが推奨されています。「活動実績」のために何を選ぶかから適切なサポートをしてくれる塾もあります。
塾の授業スタイル
大学受験の塾で採用されている、代表的な塾の授業スタイルを5種類紹介します。

集団指導塾

集団指導の塾では、講師が前に立ち、黒板などを使いながら一斉授業を行います。
複数の生徒が同時に授業を受ける形式で、年間カリキュラムに沿って授業が進むため、計画的に学習したい生徒に適しています。
個別指導塾

個別指導塾は、講師1人が生徒1~3人を担当する指導方式の塾です。
1対2~3の場合は、生徒の一人が講師から指導を受けている間に、他の生徒が問題演習を行う形式が一般的です。
他の生徒の学習が気にならないよう、大学生と高校生、文系と理系など、異なる内容を学習している生徒同士が一緒に受講することが多いです。
オンライン塾

オンライン塾では、Zoomなどのシステムを使い、パソコンやタブレットの画面越しに講師とやり取りをしながら授業を進めます。
通塾の必要がなく、自宅で受講できるため、時間を有効に使いたい生徒や、近くに塾がない地域に住む生徒が利用しています。1対1の個別指導の塾が多いです。
映像授業
映像授業とは、東進ハイスクールや河合塾マナビスのように、録画された授業の動画を塾のブースや自宅で視聴しながら学習を進める形式です。
自分のペースで受講できるため、1.5倍速などで視聴し、わからないところだけをゆっくり繰り返すといった方法で、効率よく学習を進めている生徒が多いです。
学習管理型

学習管理型とは、講師と生徒が一緒に学習計画を立て、その計画通りに自習するという方式の塾です。
週1回の面談で先週分の進捗を確認し、今週分の計画を立てるということを繰り返しながら、志望校合格を目指して学習を進めます。
塾の費用例
大学受験対策塾の費用例を、塾の受講形式にわけて紹介します。
<高校3年生の費用例>
塾の形式 | 塾名 | 料金 |
---|---|---|
集団指導塾 | 臨海セミナー | <月額> 1講座:11,000 円 2講座:21,450円 3講座:31,350円 4講座:40,150円 5講座:47,850円 6講座:54,450円 7講座:60,500円 8講座:66,000円 9講座:70,950円 10講座:75,350円 ※1講座=週1回×4回 |
個別指導塾 | 明光義塾 | <月額> 週1回:20,900円 週2回:37,840円 週1回:54,560円※1コマ90分 |
オンライン塾 | オンライン個別指導MeTULAB | <月額> 週1回:35,000円〜 ※プランによって異なります。 |
映像授業 | 河合塾マナビス | <1コマあたり> 45分×1講:1,910円 60分×1講:2,550円 90分×1講:3,820円 |
学習管理型 | オンライン個別指導塾 東大毎日塾 | <月額> 毎週60分の場合:43,780円 |
大学受験対策で塾に通い始めるタイミング
志望校合格を目指すなら、できるだけ早く塾に通い始めるのが理想です。
高校1・2年生から通うメリット
大学受験対策では、高校3年間で学ぶ全範囲を3年生の夏頃までに終え、その後は問題演習や過去問対策に集中することが望ましいです。
そのため、3年生から準備を始めるのでは遅く、1・2年生の段階から塾に通い、前倒しで学習を進める必要があります。
早期に塾に通うことで、学校の授業を先取りして学習できるため、定期テストでも良い成績を取りやすくなります。
特に総合型選抜や学校推薦型選抜を視野に入れている場合は、よい評定平均を維持するためにも、できるだけ早くから塾に通うことをおすすめします。
高校3年生から通う場合の活用法
部活動の都合などで3年生から塾に通い始める場合は、個別指導塾を利用し、志望校対策に特化して学習を進めるのも一つの方法です。
短期間で目標を達成するためには、志望校合格に照準を絞り、出題傾向に合わせて学習を進めるとよいでしょう。
塾選びの5つのチェックポイント
ここからは、大学受験対策の塾を選ぶ際に確認したいポイントを紹介します。

立地・通いやすさ
大学受験対策のために選ぶなら、自宅から近い塾がおすすめです。
多くの高校生が、自宅と学校の間にある塾を選んでいますが、中でも特に自宅から近い塾がおすすめです。3年生の冬以降は学校に行かず、自習室で勉強する機会が増えるため、自宅から近い方が通いやすいというメリットがあります。また、受験期には「今すぐ塾に行って相談したい」ということが出てくる場合もあるため、気軽に行ける立地が理想です。
目標を達成できる塾か
志望校に合格できる塾かどうかを見極めるための、3つのポイントを紹介します。
志望校への合格実績
塾の合格実績は、その塾の指導力やレベルを測る指標になります。候補の塾が決まったら、自分の志望大学や学部の合格実績があるかどうかを確認しましょう。
合格者の体験記も読み、どのように学習を進めたのかを確認しておくと、今後の学習計画の参考になります。
志望校のレベルに合ったカリキュラムと教材
塾の難易度やレベルも確認しておきましょう。自分に合ったレベルの講座があるかどうか、難関大学向けのコースが用意されているかどうかといった情報がわかると、塾のレベルが自分に合っているかどうかを判断しやすくなります。
講師の指導力
講師の質は、成果に直結します。集団指導、個別指導、オンライン指導など、塾の形式によって講師に求められる適性は異なります。
特に個別指導やオンライン指導の塾では、指導の質を一定に保つため、独自の研修制度や資格制度を設けていることもあります。
こうした情報は塾の案内に掲載されていることが多いため、確認しておくとよいでしょう。
自習室の環境
大学受験が近づくと、自習室を利用する機会が増えます。特に3年生の秋以降は朝から自習室に通うことが多くなるため、自習室の環境や開室時間などを確認しておくことをおすすめします。
たとえば、朝から自習室に行きたいのに、午後からしか開いていないということがあると、効率が悪くなり、学習意欲が低下してしまう可能性もあります。
受験直前期や長期休暇にどのように利用したいかを決め、それが可能な塾を選ぶことをおすすめします。
サポート体制
塾選びでは、進路相談のサポート体制がどうなっているかも確認しておきましょう。
受験戦略に詳しいか
大学受験の入試方式は複雑なため、塾と相談しながら出願するのが理想です。
受験戦略に詳しい塾であれば、どの方式で受験すべきか、併願校はどこにするとよいかといった相談に乗ってもらえるので、安心です。
小論文に対応しているか
総合型選抜や学校推薦型選抜で受験する場合は、志望理由書や小論文を書く必要があります。塾で添削や面接指導を受けられるかどうかを事前に確認しておきましょう。
大学受験の小論文は、ただ読みやすい文章が書かれていればよいというものではありません。
合格するためにはどう直すとよいのか、どのように書くべきなのかまで指導できる体制かどうかを確認しておくことが重要です。
費用
費用は塾によって大きく異なります。一般的に、集団指導よりも個別指導や映像授業の方が高額になる傾向があり、季節講習や直前期には、特別講座などを受講するためさらに高額になることもあります。
料金表が公開されていない場合は、塾に問い合わせて見積もりをもらい、比較してみるとよいでしょう。
塾情報の収集方法
大学受験で合格するためには、情報収集が鍵になります。そこで、受験情報を集める方法を紹介します。
比較サイトで情報を集める
塾の比較サイトには、各塾の基本情報や特徴、授業料、コース内容などが詳しく掲載されています。レビューも掲載されており、複数の塾の情報をまとめて確認できるため、効率的な情報収集におすすめです。
入塾キャンペーンや期間限定の特典が紹介されていることもあるので、ぜひチェックしてみてください。
体験授業に参加する
体験授業に参加することで、塾の雰囲気や授業内容を実際に自分の目で確かめることができます。
個別指導や映像指導の塾では、体験授業として数回分を無料で受講できる制度を用意しているところもあります。このような制度を活用し、各塾のことをよく理解したうえで決めることをおすすめします。
面談で指導方針や不明点を質問する
入塾前に行われる面談の機会を活用して、塾の指導方針や学習方法、受講形式などについての疑問を解消しておきましょう。
面談には保護者も同席し、一緒に内容を確認するのが理想です。入塾後にミスマッチに気づくことを防ぐためにも、気になる点は細かいことでも事前に質問し、納得したうえで入塾を決めるようにしましょう。
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